東大阪の病院で治らない腰痛(工事中テスト) - 大阪「TN整体院」

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東大阪の病院で治らない腰痛(工事中テスト)

タイトル案1:(仮)姿勢を正す! ―理学療法士が教える姿勢改善の方法-
タイトル案2:(仮)ねこ背を治す! -自分で悪い姿勢を治す方法-

赤字の写真とある所は写真
青字の図とある部分は図
緑字の筋肉の名前の部分は筋肉のイラスト
をそれぞれ挿入

はじめに

 本書を手にとって頂きありがとうございます。この本はあなたの姿勢を美しく健康的に改善するための本です。
 姿勢が悪いと見た目が美しく見えないだけではなく、健康を害します。腰痛・肩こりといった軽度の症状から、頚椎症や腰椎症などの神経症状を有する疾患を引き起こす原因にもなります。私は病院でそのような病気の人たちの治療に携わっている理学療法士です。

 また心理学的要因から、姿勢の悪い人は「しょぼくれている」「自信がなさそう」「信用できない」「頼りにならない」といったネガティブなイメージを第三者に与えます。これはビジネスシーンにおいて、不利な要素となることは言うまでもありません。
取引相手との交渉のみならず、上司・部下など内側の人間に対しても、そしてあなたに接する全ての人に対しての印象に影響を与えます。

本書は実用書なので効果がなければ意味がありません。是非、この「はじめに」で紹介する3つの実技だけで良いので、実際に行ってみてもらえないでしょうか。かなり分かりやすい効果がすぐに現れます。


実技A ハムストリングスのストレッチ
①まず前屈して自分の手がどこまで届くか確認します。(写真1)
②しゃがんで両方の手のひらを床につけます(写真2)
③手のひらを床につけたまま両足を伸ばせる所まで伸ばします(写真3)
太ももの裏側がひっぱられて少しキツイですが20秒ここで我慢してみてください
④前屈して自分の手がどこまで届くようになったか確認してみてください(写真4)

 どうでしょう。確実に①より④のほうが手が下まで届くようになっていると思います。たった20秒で筋肉の柔軟性が改善したのです。これは本書の中でもご紹介する姿勢改善法のテクニックの一つです。筋肉の柔軟性と姿勢は密接な関連性を有しています。

図1
 この実技でストレッチをかけたのは太もも後面にあるハムストリングスという筋肉です。この筋肉の柔軟性が低下して硬く・短くなると、骨盤を後ろに傾けます。そうすると、その影響で背骨は前のめりに湾曲し、いわゆる猫背になってしまいます。
 
このハムストリングスに限らず、姿勢の悪い人は身体が硬い人が非常に多いのです。筋肉の柔軟性の低下によって、硬くなった筋肉に骨が引っ張られて関節が曲がり、姿勢が悪くなっているのです。

 厳密にいうと、単純な柔軟性の低下だけではなく、部分的に筋肉の働きが悪かったり、反対に過剰に筋肉が働いて凝り固まったり、といった要因もあります。

 本書はこういった正常ではない筋肉の状態を改善して、美しく健康的な姿勢をつくるための実用書です。


 二つ目です。これはたまにテレビなどでやっている「一瞬でウエストが細くなる方法」のタネ明かしです。

実技B 腹横筋と横隔膜の同時収縮
①リラックスして立ちます。この姿勢ではじめにウエストのサイズを測ります。写真16
②深呼吸の要領で大きく息を吸い、背すじを伸ばします。ここでもう一度ウエストのサイズを測ります。写真17

 どうでしょう。①より②のほうがウエストのサイズが小さくなっているはずです。実際には一人でウエストのサイズを測るのは難しいので分かりにくいかもしれませんが、②の状態の時のほうがお腹が凹んでいるような感じは分かるのではないでしょうか。

 これは呼吸に合わせて腹横筋というお腹を凹ませる筋肉が働いたためです。図29 この腹横筋の働きが悪いとお腹は前方にでっぱり、正しく働けばお腹を凹ませ背すじを伸ばすのです。

 ちなみに、テレビに出てきてこういうことをする人は慣れているので、なんらかの方法で被験者に無意識の内に腹横筋を収縮させ、その瞬間にウエストのサイズを測っているというわけです。

 もちろん、こういう方法ではすぐにウエストサイズは元に戻ってしまいます。しかし、持続的に腹横筋が働く身体をつくれば、実際に細いウエストを手に入れることができます。そして、それは可能です。


 3つ目です。これは「実技」というほどではありませんが、是非試してみてください。椅子に座っている時の姿勢がすぐにかわります。

実技C 座面の高さを変える
①まず普通にリラックス(脱力)して自分がちょうど良いと思う座面の高さの椅子に座ってみてください。写真115
②固めの座布団やクッションを敷き、座面を①の時より5~10cm高くします。足の裏をしっかりと床につけたまま座ってください。写真116

 どうでしょう。普段猫背気味の人では①より②の座り方のほうが少し背すじが伸びたのではないでしょうか? 少なくとも背すじを伸ばしやすくはなるはずです。

写真をよく見比べてもらうとわかるのですが、①と②では股関節の曲がっている角度が少し違います。②の方が股関節の曲がり方の角度がやや少ないのです。これが原因で骨盤の傾きが変わり、姿勢全体の変化をもたらしているのです。

 骨盤や股関節の影響で姿勢は大きく変わってきます。この辺の理論や改善方法なども本書で紹介しております。是非、さらっとでも良いので御一読頂ければ嬉しく思います。

目次
はじめに
第1章 悪い姿勢とは
第2章 骨盤のゆがみ
第3章 股関節と姿勢・動作
第4章 体幹筋の働き:コア・スタビリティ
第5章 呼吸に使われる筋肉と姿勢の関係
第6章 インナーマッスル(深層筋)とアウターマッスル(浅層筋)
第7章 その他の姿勢や健康に大事なこと(肩甲骨とふくらはぎ)
第8章 実技:体幹編
第9章 実技:下肢(脚部)編
第10章 悪い姿勢がもたらす病態
第11章 姿勢と心理
あとがき
 

第1章 悪い姿勢とは

1:横から見た場合(前後方向のゆがみ) 猫背型・反り腰型

 そもそも、悪い姿勢とはどのような姿勢なのでしょうか。ここで、日本人に多い悪い姿勢を簡単に3種類あげてみます。

1:猫背型 写真05
 猫背は悪い姿勢の代表なのではないでしょうか。厳密に見てみると、背中が円くなっているだけでなく、頭部の位置が前方に変位、肩の位置も前方に変位、その影響でバランスをとるために膝が少し曲がっています。
 頭部の位置の変位により、肩こりを非常に引き起こしやすい姿勢でもあります。また、背骨の湾曲が正常でないために腰痛の原因にもなります。膝が伸びきらないことから中高年以降では膝関節痛の原因となる場合もある姿勢です。
 
2:反り腰型 写真06
 腰が大きく反っており、お腹が前方に出っ張っています。この姿勢はお腹が出ている人がとりやすい姿勢です。妊婦さんなどは自然とこの姿勢になります。
 こちらも比較的多い姿勢なのですが、腰痛の原因になりやすい姿勢です。妊娠などではなく、単純にお腹が出ているだけの人の場合、脂肪がたまっているというよりも、腹筋の働きが悪い為に内臓を押さえることが出来ていないという場合が多いようです。

3:猫背+反り腰型 写真07
 腰が反ってお腹が出ており、肩はなで肩で頭部が前方に変位している姿勢です。胴体の上半分が猫背型、下半分が反り腰型といっても良いでしょう。
 言うまでもなく、腰痛、肩こり、膝関節痛などの病態を引き起こしやすい姿勢です。

 どうでしょう? 以上の悪い姿勢を見て、どのように思われますか? おそらくここで上げた3つの姿勢をみて「美しい」と感じる人はいないと思います。むしろ「醜い・美しくない」と感じる人が大半なのではないでしょうか。

 人の脳は本能レベルで、健康的な人間を美しいと感じるように出来ているようです。健康的な人に魅力を感じたほうが、子孫の繁栄に有利だからかもしれません。
 そして、ここであげた悪い姿勢はどれも様々な病態を引き起こす、医学的に見ても悪い姿勢なのです。
 上記の3つの悪い姿勢は、肩こりや腰痛の原因になるのは間違いありません。それだけではなく、もっと深刻な病態の要因にもなるのです。例えば、頚椎症や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症や胸郭出口症候群といった神経疾患を引き起こす可能性が大きいのです。
 
 私は、病院で理学療法士としてリハビリ関連の仕事をしています。そして、まさにこのような病気の人達を相手に姿勢改善のための運動を指導しているのです。

2:正面から見た場合(左右方向のゆがみ) 重心が左右いずれかに片寄っている
 身体の重心が左右のいずれかに常に片寄っている人も多く見かけます。写真を見てみてください。写真8:座位 写真9立位 
写真8では鼻先やアゴの先の位置と、両膝の中間の位置が一致していません。写真9では鼻先やアゴの先の位置と両足のつま先の中間が一致しません。これらは体の重心が右に寄ってしまっているということです。パっと見たくらいではこういう小さな左右への片寄りというのはわからないことが大半です。

こういう重心が右に寄っている人は立ち上がる時はどのようにどのように立ち上がるか。写真の様な立ち上がり方になることが多いのです。写真10:座位 11:臀部離床 12立位

ここでは座位姿勢・立位姿勢、あと立ち上がり動作だけを取り上げましたが、ここで取り上げたような人の場合、日常におけるすべての動作が右側に体重が多くかかってしまっているのです。歩いたり、階段を上り下りする時なども。

 このように、身体の左右の一方だけを過剰に使い続けると身体に歪みが出てきます。日常生活においては、できるだけ身体を左右均等に使う方が良いのです。本書では、全ての動作の基本となる座位と立位姿勢の改善方法を実技紹介の章で紹介いたします。

3:上から見た場合(上下方向のゆがみ) 身体がねじれている
最後に、今度は上から見てみましょう。写真13を見てください。右膝が左膝よりも前に出てしまっています。これは身体が捻じれているということです。

次に写真14を見てください。こちらは膝の位置は左右そろっているのに右の肩が左の肩よりも前方に位置しています。これも身体が捻じれてしまっているということです。

写真15を見てください。今度は膝も肩も右側が左側よりも前に出てしまっています。顔は正面を向いていますので、当然これも身体が捻じれてしまっているということです。

身体の捻じれは身体の左右の筋肉の働き方がアンバランスなために起こります。この筋肉の働き方のアンバランスが身体のねじれ・ゆがみとして現れるのです。

この章のまとめ
・悪い姿勢とは、不健康な姿勢である。
・人の脳は健康的な姿勢を美しいと感じ、不健康な姿勢を醜いと感じる
・前後方向・左右方向・上下方向、3方向から、3次元的に身体の歪みを認識する必要がある

第2章 骨盤のゆがみ

「骨盤のゆがみ」という言葉をみかけることが多いのですが、これはどのような状態のことを言っているのでしょうか。よく聴く言葉なのですが、少なくとも医療上の専門用語としては使われない言葉です。

「骨盤のゆがみ」といわれる状態について、ここで私なりに簡単にまとめてみました。

1:骨盤の、骨同士が接合する部分がねじれる、ずれる。
図2
 骨盤は複数の骨がつながってできています。そのつなぎめの部分がねじれてしまえば、文字通りの「骨盤のゆがみ」といわれる状態になります。

 特に仙骨と腸骨をつなぐ仙腸関節という部分には負荷がかかりやすいため、この部分のねじれやズレが腰痛などの病態の原因となることは割と多くあります。

 骨盤前面の恥骨結合という部位も骨の接合部なのですが、産後の女性以外ではあまりこの部位が問題になるということはないようです。

2:姿勢の影響で骨盤が傾く・回旋する

 一般的に「骨盤のゆがみ」と言われている状態の大半はこちらになると思います。骨盤のゆがみというより、姿勢全体のゆがみであり、これは肩こり・腰痛・膝関節痛はじめ諸病態のベースになります。

 ここでいう骨盤の歪みは、その骨盤の傾きの影響などから、腹部が前方に出っ張ったり、猫背になったりもして見た目にも美しくない姿勢となります。

a:前後方向への傾斜 図3
b:左右方向への傾斜 図4
c:骨盤が回旋してしまっている 図5

 実際には、上記のa・b・cが合わさって骨盤がゆがんでいる人が大半です。たとえば、骨盤が後方に傾き、合わせて右側に傾き、さらに左側が後方に回旋してしまっているとか、そんな人が多いのです。

まとめ
「骨盤のゆがみ」は「姿勢のゆがみ」とほぼ同じ意味である
 主な骨盤のゆがみ:前後方向への傾斜・左右方向への傾斜・骨盤の回旋

第3章 股関節と姿勢・動作

股関節と姿勢
 股関節の周りの筋肉の柔軟性に問題があると、骨盤を正常ではない角度に傾けてしまうため、姿勢のゆがみの原因になります。

①股関節前面の筋肉に問題がある場合
 図10を見てください。これは股関節の前面に付いている筋肉の柔軟性が低下したり短縮している場合の図です。短縮した股関節前面の筋肉にひっぱられて骨盤が前に傾いています(骨盤前傾)。こうなると、バランスをとるために背骨は腰の部分で反りを大きくする必要が出てきます。
 つまり、股関節前面の筋肉の短縮は悪い姿勢の一つである「反り腰型」の原因となるのです。

反り腰型の原因となる筋肉(股関節周囲で)
 腸腰筋
 大腿筋膜張筋
 恥骨筋
 大腿直筋

②股関節後面の筋肉に問題がある場合
 今度は図11を見てください。こちらは股関節後面についている筋肉の柔軟性が低下したり短縮している場合の図です。短縮した股関節後面の筋肉に引っ張られて骨盤は後ろに倒れます(骨盤後傾)。こうなると、バランスをとるために背骨は前方に曲がって猫背になります。
 つまり、股関節後面の筋肉の短縮は悪い姿勢の一つである「猫背型」の原因となるのです。

猫背型の原因となる筋肉(股関節周囲で)
 ハムストリングス(大腿二頭筋・半膜様筋・半腱様筋の三つの筋肉の総称)
 大臀筋

③股関節の側面の筋肉に問題がある場合
 次は図12を見てください。骨盤の右側が上がっています。それなのに脚はまっすぐ下に伸びています。この場合、右脚の内側についている筋肉の柔軟性が低下している可能性があります。そして、反対側の左脚では外側の筋肉の柔軟性が低下している可能性があります。
 それぞれ、右脚や左脚の外側や内側の筋肉の柔軟性が低下することで、骨盤を側方に傾斜させてしまうこともあります。
 この図12を見ると、これでは脚の長さが左右で同じでは釣り合いが取れず両足で立てないようにも見えます。実際の場合では巧妙に各関節の角度などが調整されることで、左右の脚長差がなくても骨盤の傾きが相殺されてバランスをとることができます。
 バランスはとれるのですが、これがいわゆる身体のゆがみの一つでもあるわけです。

 ちなみに、若いころからずっと左右のいずれかに片寄った姿勢をとっていると本当に左右の脚の長さが変わってきます。実際に測ってみると、案外脚長差のある人は多いです。
実際に左右の脚長差がある場合でも、やはり同様に代償的に身体の各関節の角度が調整され、一見脚長差などないように見えます。日常生活においても左右の脚長差が2cm以下であれば動作に問題は生じないとされています。

骨盤の側方傾斜の原因となる筋肉(股関節周囲で)
 外側 中臀筋・小臀筋・大腿筋膜張筋
 内側 短内転筋・長内転筋・大内転筋・恥骨筋・薄筋

※その他
 上述した場合とは別に、両側の股関節外側の筋肉が凝り固まって柔軟性が低下し、反対に両側の股関節内側の筋肉が弱化して衰えている人が非常に多くいます。
 この場合、図13のように脚が外に開き、いわゆるO脚やガニ股と言われる姿勢になります。これは膝を痛めやすい姿勢の典型です。


④股関節の回旋作用がある筋肉に問題がある場合
最後に骨盤を回旋させる筋肉を見てみましょう。写真125を見てください。右側の足先が左側よりも前に出ています。これは骨盤の右側が前に出て左側が後方に下がっている、つまり回旋してしまっている状態です。上半身や顔はまっすぐ正面を向いていますので骨盤の回旋によって身体のねじれが起こってしまっているということです。

こういう人は股関節では大腿骨を回旋させる筋肉の柔軟性に左右差が生じています。

大腿骨を回旋させる筋肉
 股関節外旋筋群(梨状筋・上双子筋・下双子筋・大腿方形筋・内閉鎖筋・外閉鎖筋)
 

 どうでしょう。ここまで読んで頂ければお分かり頂けるかと思いますが、股関節周囲の柔軟性の低下は第2章で紹介した3種類の骨盤のゆがみの全てを引き起こす原因となるのです。

3種類の骨盤のゆがみ
 前後方向への傾斜
 左右方向への傾斜
 骨盤の回旋

そして、骨盤がゆがめば、その上についている背骨の曲がり方が変わってくるため、股関節の柔軟性は姿勢の制御に対して重要な意味を持っているのです。

股関節と動作
 単純な座位や立位姿勢以上に、運動を行うときに股関節の柔軟性はさらに重要になります。

 図15を見てください。これはゴルフのスイングをしている写真です。一般に「腰をひねる」動作ですが、左足の足先の向きに注目してください。スイング後の足先は体の正面とは違う方向を向いています。実は、一般に「腰をひねる」と思われている動作の大半は(立位では)股関節の回旋運動によるものなのです。
 実は腰椎(腰の骨)の回旋作用は左右に5°しかありません。それ以上の回旋負荷が腰にかかると、組織の損傷が起こり腰痛の原因となります。股関節の柔軟性に問題があれば腰椎に過剰な回旋負荷がかかってしまう可能性が高いのです。
 (※体をひねる作用には頚椎と胸椎の回旋作用も重要です)

 今度は図16を見てください。左は股関節の柔軟性に問題がない場合の前屈時の図です。この場合、股関節が前方に70°、腰椎は前方に40°曲がっています。
 これが股関節の柔軟性に問題があると、右側の図のように代償として腰椎に過剰に負荷がかかります。腰椎だけではなく、骨盤に存在する仙腸関節(図17)という部分にも過剰な負荷がかかり、腰椎や仙腸関節周囲の組織を損傷させてしまい腰痛の原因となります。

 この様に、股関節の柔軟性に問題がある場合、腰に過剰な負荷がかかってしまい腰痛を引き起こす原因となります。そして間接的には腰痛だけではなく、姿勢不良を原因とするすべての疾患の原因にもなり得ます。

この章のまとめ
 股関節の柔軟性低下は骨盤のゆがみを引き起こす→姿勢のゆがみ
 股関節の柔軟性低下は腰に過剰な負担をかける


第4章 体幹筋の働き:コア・スタビリティ

腹筋群と背筋群
 人間は背骨を縦方向に、垂直に立てて姿勢をつくっています。これが可能なのは、胴体部分前面の腹筋群と後面の背筋群、それぞれの筋肉が適正に働いているからです。

図6を見てください。普通、このように背筋群によって背中側から背骨を引っ張る力と、腹筋群が内臓を圧迫して圧力で胸郭を押し上げる力とで、人は姿勢を保っています。

 第1章で紹介した悪い姿勢「猫背」「反り腰」の双方に共通するのは、大半の場合腹筋群の働きが悪いという点です。

 腹筋群の働きが悪いと、図7のように胸郭を十分に支えることができずに前に倒れこみ「猫背」になるか、反対に図8のように腰の部分の背筋群が過剰に働いて腰の部分の反りが強くなり「反り腰」なってしまうのです。

腹筋群に含まれるいくつかの筋肉のうち、特に腹横筋の働きが悪いと綺麗な姿勢を保つことができません。
 この腹横筋はいわゆる腹筋運動をしても鍛えることができません。腹筋運動で鍛えられるのは腹直筋という、腹筋群の中でもまた別の筋肉だからです。

体幹のコア(核)になる筋肉
 上述した腹横筋の他にも体幹には姿勢制御において特に重要な働きをする筋肉がいくつかあります。ここでそれらについて簡単に紹介します。

1:腹横筋
 すでに少し紹介しましたが、この筋肉は腹筋群のなかで最も深い場所にある筋肉です。この筋肉の働きは「お腹を凹ませる」作用です。意識的にお腹を凹ませる時にも働きますが、普段は無意識のうちに姿勢の変化に応じて自動的に働いています。この筋肉の働きが悪いと、姿勢が悪くなるだけでなく、内臓が前に押し出されてお腹が前方にでっぱります。

2:多裂筋(腰部)
 背骨の背中側に付いている筋肉です。同類の他の筋群よりも深層・内側についています。腹横筋と連動して働き、背骨を支えて姿勢を保ちます。腹横筋の働きが悪いとこの筋肉は代償的に過剰に働きます。腰痛の人などは背骨の横にあるこの筋肉が凝り固まっている場合が多いです。

3:横隔膜
 膜という名前ですが横隔膜は筋肉です。息を吸う時に働きます。息を吸う時に下にさがり、息を吐くときに上に戻ります。この筋肉の働きがなければ人間は呼吸ができません。この横隔膜は胸郭の下面の壁となります。

4:骨盤底筋群
 この筋肉は骨盤の真ん中にある大きな穴を塞いでいる小さな筋肉の群です。この筋肉はおしっこを我慢する時に働く筋肉(尿道括約筋)やお尻の穴をしめる筋肉(肛門括約筋)などであり、普段あまり意識をすることのない筋肉です。この筋肉がちゃんと働かずにたるんでしまうと内臓をうまく下から支えることができません。

 上記の4つの筋肉は身体のインナーユニットと呼ばれる筋肉で、それぞれあまり意識をしなくても姿勢を制御する時に自動的に協調して働いてくれます。このインナーユニットは最も狭い意味での身体のコア(核)となる部分であり、これらの筋肉を正常に働かせることは、美しい姿勢をつくるうえで重要であるばかりでなく、無理なく身体を動かす上で非常に重要な意味を持つのです。図9

 この体幹のコア(核)の部分の安定性のことを「コア・スタビリティ」と言います。

 体幹は文字通り身体の幹であり、ここがしっかりしていないと腕や脚を使った運動や動作にも十分に力を入れることができません。そして無理な動作を続けると体の幹自体が醜く曲がりくねってしまうという悪循環になるのです。

この章のまとめ
背骨はお腹側の腹筋群と背中側の背筋群の働きで支えられている
体幹の筋肉の中でも特にコア(核)となる筋肉の働きが重要

第5章 呼吸に使われる筋肉と姿勢の関係

 「はじめに」の項で紹介したウエストのサイズが一瞬で小さくなる方法の実技です。この実技に関連した内容を説明するのでもう一度ここで紹介しておきます。是非とももう一度ここで試してみてください。

実技B 腹横筋と横隔膜の同時収縮
①リラックスして立ちます。この姿勢ではじめにウエストのサイズを測ります。写真16
②深呼吸の要領で大きく息を吸い、背すじを伸ばします。ここでもう一度ウエストのサイズを測ります。写真17

①より②の状態のほうがお腹が凹んでウエストのサイズが小さくなっているはずです。

 このときにお腹が凹む理由に絡めて、この章では呼吸に使われる筋肉と姿勢との関係について説明いたします。

 実技Bのとき、胸式呼吸という呼吸方法で息を吸っています。それに対して腹式呼吸という呼吸方法もあります。

 なんとなくイメージとして、腹式呼吸は良い呼吸法で胸式呼吸は悪い呼吸法というようなイメージを持っている人もいるかもしれません。しかし、腹式呼吸と胸式呼吸は同じくらい重要なものです。「深呼吸」と一般に呼ばれている呼吸方法は胸式呼吸に類別される呼吸法でもあります。まずは呼吸方法に良い方法と悪い方法があるわけではないということを理解してください。

腹式呼吸と胸式呼吸:筋肉の働き方の違い
胸式呼吸と腹式呼吸の違いは、簡単に説明すると以下のようになります。

 胸式呼吸:息を吸うときにお腹が凹む・背すじが伸びる
      息を吐くときに猫背になる
 腹式呼吸:息を吐くときにお腹が凹む呼吸
      息を吸うときにお腹が前に出る

図18の左側を見てください。これは実技Bとして紹介した胸式呼吸を行っている時の筋肉の働き方の図です。息を吸うとき、横隔膜という筋肉が働いてこれが下に下がります。このタイミングでお腹を凹ませる腹横筋が働いて内臓が圧迫されると背骨が後ろに反って背すじが伸びます。実技Bを行うとお腹が凹んで背すじが伸びるのはこのような筋肉の共同した活動によるものなのです。
 では、この呼吸法で息を吐く場合はどうなるでしょうか。図18の右側のようになります。横隔膜が弛緩して上にあがり、腹横筋も働きません。こうなると体の前側からの支えがなくなるため、背骨は前方に曲がり猫背のようになります。
 実際に胸式呼吸の一種である深呼吸をしてみれば、息を吸うときと吐く時での姿勢の違いが良く分かると思います。是非一度試してみてください。

今度は図19を見てみてください。こちらは腹式呼吸を行っている時の筋肉の働き方の図です。
図の左側が息を吸うときの筋肉の働き方です。横隔膜が働いて下に下がっています。しかし腹横筋が働いていないため、横隔膜によって上から圧迫された内臓が前方に押し出されお腹が前方にでっぱります。
次に図の右側、息を吐く時の図です。腹横筋が働き内臓を圧迫してお腹を凹ませています。圧迫された内臓の上方向への圧力によって横隔膜が上に押し上げられています。息を吐く時、横隔膜は弛緩するだけで上方向に戻っていくのですが、腹式呼吸の場合ではこの内臓の圧力の作用で更にその動きを助け、より深く息を吐くことができます。
 腹式呼吸の場合、息を吸っても吐いても姿勢に影響を与えません。また、息を深く吐き出すことができるため、深い呼吸ができるようになります。

以上のことを踏まえて、改めて胸式呼吸と腹式呼吸の特徴をまとめるとこうなります。
  胸式呼吸:息を吸うと背すじが伸びてお腹が凹む
       息を吐くと姿勢が崩れて猫背になる
  腹式呼吸:息を吸っても吐いても姿勢に影響がない
       深い呼吸ができる

呼吸方法の使い分け
 普通、人は特に意識をせずに胸式呼吸と腹式呼吸、この異なる呼吸方法を適切に使い分けています。
 例えば、腹式呼吸をしながら運動をすることは困難です。試しに腹式呼吸をしながらランニングをしてみてください。理屈抜きに不可能なのがよくわかります。
 運動をする時には、胸式呼吸の方が有利なのです。息を吸う時に背すじを伸ばす作用が運動中の姿勢の安定を助けるからです。ただし、胸式呼吸で息を深く吐くと背骨が曲がり猫背になってしまうため、必然的に呼吸は浅くなってしまいます。

 ちなみに、もっとも姿勢を安定させる方法は息をとめることです。実際に重量挙げの選手や短距離走の選手などは息を止めます。背骨への負担を減らしたり、体の重心を安定して効率よく走ったりするには、横隔膜や腹横筋をグッと固めて動かさないのが一番効率的なのです。

 安静時においては腹式呼吸のほうが深く呼吸ができるため、効率的な呼吸法となります。また、歌をうたったり大声を出すときなどは、息を強く吐くことができるために腹式呼吸が有利となります。

しかし、たまに安静時でも胸式呼吸を行っている人がいます。女性に多いのですが、これは問題です。可能性として、腹横筋や背中側の筋肉の働きが正常よりも悪い可能性があります。安静時であっても胸式呼吸による姿勢維持作用がないと姿勢の維持が難しくなっているかもしれないからです。

 胸式呼吸では呼吸は浅くなりがちなので、長期的にみると健康を損なう根本的な原因の一つにもなりかねません。

 もし自分が安静時でも胸式呼吸をしているようであれば、本書の実技紹介の章で紹介する腹横筋など体幹に対するアプローチ方法を是非実践してみてください。

この章のまとめ
腹式呼吸と胸式呼吸の特徴を知ることが重要
場面に応じて呼吸法を調整できることが大事
胸式呼吸は悪い呼吸法などではない。ただし、安静時に胸式呼吸をしている場合は問題あり。

第6章 インナーマッスル(深層筋)とアウターマッスル(浅層筋)
 インナーマッスルという言葉を聞いたことはありませんか? 最近その重要性が有名になってきているので知っている人もいるのではないでしょうか。
 身体の内側の深い位置にある筋肉のことをインナーマッスル(深層筋)といいます。これに対して、身体の表面に近い浅い部分にある筋肉はアウターマッスル(浅層筋)といいます。

 例えば、腹筋群と呼ばれる筋肉には内側から順に、腹横筋→内腹斜筋→外腹斜筋→腹直筋という4つの筋肉があります。この場合、腹横筋はインナーマッスルで腹直筋はアウターマッスルになります。

 インナーマッスルは主に姿勢の制御や安定性、ひいては生命維持にも寄与するような筋肉です。例えば第4章や第5章で紹介した呼吸や姿勢維持に関係するような筋肉もこれにあたります。

 アウターマッスルのほうの働きはというと、こちらは運動、つまりダイナミックに動く時に強く働く筋肉です。力強い動きを出すにはこのアウターマッスルの作用が重要になります。

 姿勢が悪い人に非常に多いのは、インナーマッスルの働きが悪いということです。インナーマッスルの働きが悪いと、その代償として本来姿勢の維持には関わらないアウターマッスルの作用で姿勢が維持されるようになります。本来とは違う筋肉の作用により姿勢が維持されると、変な姿勢になります。これが第1章で紹介した「悪い姿勢」です。

 アウターマッスルの作用で姿勢を維持すると、その筋肉は過剰に緊張して凝り固まり柔軟性が低下します。肩こりや筋肉に由来する腰痛の原因などはまさにこれです。

 このような状態を解消するためには、インナーマッスルの活性化とアウターマッスルの過剰な緊張や柔軟性を改善する必要があるのです。


第7章 その他の姿勢や健康に大事なこと(肩甲骨とふくらはぎ)

肩甲骨の位置のズレ
 脚に対しての骨盤と同様に、腕に対しては肩甲骨が重要な意味を持ちます。肩甲骨の位置がズレていると姿勢が悪くなりますし、慢性的な肩やクビの凝りを引き起こす原因にもなります。

 肩甲骨の位置がズレているとはどういうことでしょうか。図20を見てください。最も多いのは、この図のように肩甲骨が外側にズレるズレかたです。
 背骨が前方に曲がる猫背型の姿勢をとると、自然と肩甲骨は外側に変位し、いわゆる撫で肩になります。写真18 このような姿勢や運動のつながりを運動連鎖というのですが、この運動連鎖によって「猫背+撫で肩」といった、一般的によく見かける悪い姿勢がつくられることも多くあります。

 このように、肩甲骨の位置がズレて撫で肩姿勢を長期間とっていると、この姿勢でいることが自然となってしまい、胸部にある大胸筋や小胸筋といった筋肉が硬化・短縮してきます。これらの筋肉は肩を前方に引っ張る作用があるため、柔軟性が低下してしまうとこの撫で肩姿勢を固着させてしまう原因になります。
長年「猫背+撫で肩」の姿勢をとっている人はこの大胸筋や小胸筋の柔軟性を改善する必要があります。

ふくらはぎの筋肉と足のむくみ・立位姿勢の安定
 ふくらはぎは第二の心臓とも呼ばれるほど、血液の循環に重要な意味を持っています。この部分の筋肉が十分に働かないと、足部の血液を上方向に押し戻すことができなくなってしまうためです。
 血液を上方向に十分に押し戻すことができなくなると、体の水分が足元に貯留してしまいます。これがいわゆる「むくみ」の原因です。
 運動不足が原因でふくらはぎの筋肉の働きが悪くなり、足首のあたりがむくんでいる人は実際にかなり多くいます。とくにもともと筋肉量が少ない女性に多くみられる症状です。
 筋肉が使われていないため、単純に衰えているだけではなく、凝り固まったりして柔軟性が低下していることも多くあります。

 「ふくらはぎ」といわれる部分の大半は下腿三頭筋という筋肉です。この下腿三頭筋は腓腹筋という筋肉とヒラメ筋という筋肉の総称です。
 この下腿三頭筋の働きが悪いと足のむくみの原因になるのですが、もう一つ重要な筋肉があります。それは下腿三頭筋よりも深部にある、足の指を曲げるための筋肉です。
 運動不足の生活が続くとこの足の指を曲げるための筋肉も衰えてしまいます。この筋肉は血液の循環にとって重要なだけではなく、立位姿勢や立位動作中にしっかりとバランスがとれるように地面を踏みしめる働きをします。
 図27の左側の図を見てください。足の指を曲げる筋肉がしっかりと働いていない状態というのは、極端にいうとこの図のように足の裏の極めて狭い部分で全体重を支えているようなものなのです。当然こうなるとバランスを取るのが難しくなり姿勢も悪くなります。
 反対に足の指を曲げる筋肉がちゃんと働いている場合は図27の右側の図のように足の裏全体で体重を支えることができます。当然この方が姿勢も動作も安定します。

 足の指は足の裏全体から見ると大した大きさではないように見えるかもしれません。しかし、図28の骨の図を見てください。「足の指」を図の趾骨の部分だけではなく、中足骨の部分まで含めて捉えると、足の裏全体の面積のかなりの部分を占めることになります。足の指を曲げる筋肉が働かない状態というのは、この図28の足根骨の部分だけで体重を支えている状態と言っても良いかもしれません。

 ふくらはぎの部分の筋肉の機能を改善することは、足のむくみをとるために重要であり、またバランスよく安定した立位姿勢をとったり、安全に歩いたり運動したりするためにも重要だということです。

※足の指を曲げる筋肉:長母趾屈筋・長趾屈筋など

第8章 実技 体幹編  

実技1 腹横筋トレーニング(座位)
目的:姿勢の維持・調整に最も重要な腹横筋を鍛えます。

手順1:背もたれにもたれずにイスに座ります。両手をお腹に当てます。
写真19

手順2:鼻から大きく息を吸います。息を吸った時にお腹が膨らむように呼吸します。
写真20

手順3:10秒以上時間をかけて口から息を吐きます。息を吐いた時にお腹が凹むように呼吸します。少し苦しいかもしれませんが、できるだけ細く長く息が吐けるように口をすぼめて息を吐ききります。
写真21
写真22

これを5~10回程度行います。過呼吸にならないように注意して回数を調整します。実際に時計を見て10秒数えながら行ってみてください。意外と10秒は長いということがよくわかります。

実技2 腹横筋トレーニング
目的:実技1よりも強い負荷で腹横筋を鍛えます。こちらの運動が可能なら実技1よりもこちらを行ってください。

手順1:
四這いになります 写真23
手順2:
この姿勢で鼻から大きく息を吸います。息を吸った時にお腹が膨らむように呼吸します 写真24
手順3:
 この姿勢で10秒以上時間をかけて口から息を吐きます。息を吐いた時にお腹が凹むように呼吸します。少し苦しいかもしれませんが、できるだけ細く長く息が吐けるように口をすぼめて息を吐ききります。
 写真25

これを5~10回程度行います。過呼吸にならないように注意して回数を調整します。実際に時計を見て10秒数えながら行ってみてください。意外と10秒は長いということがよくわかります。

※ この腹横筋トレーニングは最も重要な運動です。実技1か実技2のどちらかだけでも毎日続けて行ってみてください。お腹が凹み、姿勢が良くなります。

実技3:座位での体重移動練習(前後)
 目的:腹横筋と横隔膜を使いながら理想的な座位姿勢になるように体幹の筋肉の活動を調整する

写真26
リラックスしてまっすぐにすわります。多少猫背になっていてもかまいません。上から見て膝の位置に差がないかどうかを確認します。片方の膝が前に出ているような場合、体がねじれていますので修正してください。写真27
 体のねじれを修正した場合、体の感覚に違和感があるかもしれません。しかしそれで結構です。違和感を感じること自体が重要です。

写真28
大きく息を吸いながら背筋を伸ばし、胸を張ります。

写真29
息を吐きながらもとの姿勢に戻します。

ポイント
写真26と28を3回から5回繰り返します。決して急がずに、ゆっくり動作を行ってください。動作が速いとダメです。あと、お尻で体重の位置を感じながら行うと更に良いです。写真26の位置では体重はお尻の後方に、写真28の位置では体重はお尻の前方に移動するはずです。是非それを感じながら運動を行ってみてください。

あと、この運動で大切なポイントは左右のお尻に均等に体重がかかった状態で行うことです。

実技4:座位での体重移動練習(左右)
 目的:左右に同じだけ体重を移動することで体の重心の片寄りを治す

写真30
リラックスしてまっすぐにすわります。多少猫背になっていてもかまいません。
上から見て膝の位置に差がないかどうかを確認します。片方の膝が前に出ているような場合、体がねじれていますので修正してください。写真31
 体のねじれを修正した場合、体の感覚に違和感があるかもしれません。しかしそれで結構です。違和感を感じること自体が重要です。

写真32
 背筋を伸ばして息を吸いながら右側のお尻に体重を移動します。左右の肩の高さが同じようにしてください。左右の位置が床面に対して水平になるように行います。

写真33の位置にもどす

写真34
 左側にも同様に体重を移動します。左側のお尻に体重がかかります。大切なのは、右側と同じ分だけ左に動かしてください。もしそれが難しければ右側への移動量を減らして左側に移動するのと同じ程度にして運動を行います。

悪い例
 片方の側の肩の高さが上がったり下がったりしてはいけません。これは立位で行う場合でも同じです。
 写真35 体重をかけた方の肩が下がる
 写真36体重をかけたほうの肩が上がりすぎる。

ポイント
 左右の肩の高さは背骨の運動で調整します。片方の肩の筋肉をすぼめたりして調整しては意味がありません。
 この運動をゆっくりと左右ともに3回から5回程度繰り返します。体重をかけにくい方向に多めに行っても結構です。

実技5:立位での体重移動練習(中央)
 目的:腹横筋と横隔膜を使いながら理想的な立位姿勢になるように体幹と脚の筋肉の活動を調整する

写真37
左右の足に均等に体重をかけてリラックスして立ちます。多少猫背でも構いません。

 写真38
 大きく息を吸いながら背筋を伸ばします。

ポイント
 写真37と38を3回から5回繰り返し行います。左右の足に常に均等に体重がかかっているよう注意してください。

実技6:立位での体重移動練習(左右)
目的:左右の脚に同じだけ体重を移動することで体の重心の片寄りを治す
 
写真39
肩幅くらいに足を開き、左右の足に均等に体重をかけてリラックスして立ちます。多少猫背でも構いません。

写真40
 息を吸いながら背筋を伸ばし右側の足に体重をかけていきます。右足一本でも体重が支えられそうな位置まで体重を右側に移動します。左足は床につけておきますが、多少左側の踵が浮いてしまっても構いません。この時左右の肩の高さが同じになるよう注意します。

 写真39の位置にもどす

写真41
息を吸いながら背すじを伸ばし左側の足に体重をかけていきます。左足一本でも体重が支えられそうな位置まで体重を左側に移動します。右足は床につけておきますが、多少右側の踵が浮いてしまっても構いません。基本的には右側へ移動した時と同じだけ左に移動します。この時も左右の肩の高さが同じになるよう注意します。

ポイント
ゆっくりと3回から5回行います。体重をかけにくい方向に多めに行っても結構です。左右の肩の高さは背骨の運動で調整します。片方の肩の筋肉をすぼめたりして調整しては意味がありません。

悪い例
 片方の側の肩の高さが上がったり下がったりしてはいけません。
 写真42 体重をかけた方の肩が下がる
 写真43 体重をかけたほうの肩が上がりすぎる。

実技7:立位での体重移動練習(手を組んで上下に)
 目的:手を上に挙げる動作を加えることで肋骨と肋骨の間の組織や肋骨と背骨を繋ぐ関節(肋椎関節)を動かす
写真44
手を組み左右の足に均等に体重をかけてリラックスして立ちます。多少猫背でも構いません。

 写真45
 組んだ手を上げながら大きく息を吸いながら背筋を伸ばします。

ポイント
 写真44と45を3回から5回繰り返し行います。左右の足に常に均等に体重がかかっているよう注意してください。

実技8:立位での体重移動練習(手を組んで左右に)
目的:手を上に挙げる動作を加えることで肋骨と肋骨の間の組織や肋骨と背骨を繋ぐ関節(肋椎関節)を動かす。右脚に過重した場合は右側の肋骨がより大きく動く。反対側も同様。

 写真46
手を組み肩幅くらいに足を開き、左右の足に均等に体重をかけてリラックスして立ちます。多少猫背でも構いません。

 写真47
 息を吸いながら組んだ手を上げ、背筋を伸ばし右側の足に体重をかけていきます。右脚一本でも体重が支えられそうな位置まで体重を右側に移動します。左足は床につけておきますが、多少左側の踵が浮いてしまっても構いません。この時左右の肩の高さが同じになるよう注意します。

 写真46の位置にもどす

 写真48
息を吸いながら組んだ手を上げ、背筋を伸ばし左側の足に体重をかけていきます。左脚一本でも体重が支えられそうな位置まで体重を左側に移動します。右足は床につけておきますが、多少右側の踵が浮いてしまっても構いません。基本的には右側へ移動した時
と同じだけ左に移動します。この時も左右の肩の高さが同じになるよう注意します。

ポイント
ゆっくりと3回から5回行います。体重をかけにくい方向に多めに行っても結構です。

実技9: 体幹側部のストレッチ
目的
胸郭(肋骨)の動きを悪くする体幹側部の筋肉をストレッチします。

写真111
手を組み肩幅くらいに足を開き、左右の足に均等に体重をかけてリラックスして立ちます。多少猫背でも構いません。

写真112
息を吸いながら組んだ手を上げ、背筋を伸ばし右側の足に体重をかけていきます。右脚一本でも体重が支えられそうな位置まで体重を右側に移動します。左足は床につけておきますが、多少左側の踵が浮いてしまっても構いません。この時左右の肩の高さが同じになるよう注意します。

写真113
右脚に体重をかけたまま写真のように体を左にたおします。右側の肋骨の横あたりにつっぱりを感じればうまくできています。

写真114
反対側も同様に行います。

1回20秒程度行います。


実技10 立位での体幹回旋運動
目的
 立位で過重をかけながら体の回旋を行うことで腹部と背部の筋肉の働きを調整します

写真49
左右の脚に均等に体重を乗せ、左右対称の姿勢で立位をとります。
写真50
 大きく息を吸いながら右側の脚に体重を乗せます。この時、両肩の位置は床面と水平になるように注意します。どちらかの肩が上がったり下がったりしてはいけません。
写真51
 良い姿勢を保ちながら右側に体を回旋します。この時も左右の肩の位置は床面と水平、どちらかの肩が上がったり下がったりしてはいけません。

写真52
写真53
 反対側にも同様のことを行います。

左右に3回~5回ずつ行います。やりにくい方向に多めに行っても結構です。


実技11 臥位での体幹回旋運動
目的
 体幹の回旋運動を阻害する筋肉の緊張を抑制します

写真54
 膝を立てて寝ます
写真55
 膝を右に倒します
写真56
 反対方向(左側)に倒します

5~10回行います

実技12 体幹回旋ストレッチ
目的
 体幹回旋を阻害する筋肉の柔軟性を改善します

①右側へのストレッチ
写真57
 寝て脚を組みます。右脚が上になります。
写真58
 組んだ脚を左側に倒します
1回20~30秒行います

②左側へのストレッチ
写真59
 寝て脚を組みます。左脚が上になります。
写真60
 組んだ脚を右側に倒します
1回20~30秒行います

動かしてみて硬いと感じる方向に多めに行っても結構です

実技13 広背筋のスタティック・ストレッチ
目的
過剰に緊張しがちな背中にある筋肉の広背筋の柔軟性を改善します。

手順1
写真のように四つ這いになります
写真61

手順2
写真のようにお尻を後方に動かして膝を曲げます。20~30秒この位置でストレッチします
写真62

実技14 大胸筋のストレッチ(中部線維)
目的:この筋肉が過剰に緊張すると肩の位置を前方に変位させるため、伸ばします。

手順1
壁際に立ちます。脇を開いて手から前腕を壁につけます。上腕は床面と水平になるようにします。
写真63

手順2
そのまま上体を回旋します(写真では右腕を壁につけているので上体を左にまわします)
この位置で20~30秒ストレッチします。
写真64

実技15 大胸筋のストレッチ(上部線維)
目的:この筋肉が過剰に緊張すると肩の位置を前方に変位させるため、伸ばします。

手順1
壁際に立ちます。写真のように手から前腕を壁につけます。
実技29の時よりも手が上に位置します。
写真65

手順2
そのまま上体を回旋します(写真では右手を壁につけているので上体を左にまわします)
この位置で20~30秒ストレッチします。
写真66

実技16 大胸筋のストレッチ(下部線維)
目的:この筋肉が過剰に緊張すると肩の位置を前方に変位させるため、伸ばします。

手順1
壁際に立ち、写真のようにやや低い位置で掌を壁につけます。
写真67

手順2
そのまま上体を回旋します(写真では右腕を壁につけているので上体を左にまわします)
この位置で20~30秒ストレッチします。
写真68


実技17 肩関節の位置の調整

目的
前方に変位した肩の位置を後方に戻します。

手順1
写真のように両腕を上げます
写真69

手順2
そこから写真のように腕を回します。(10回程度)
写真70 71 72

ポイント
大きく動かす必要はありません。しっかり後ろまで腕を移動させることが重要です。

実技18 腹直筋トレーニング1
目的
 お腹の正面の筋肉を鍛えることで、引き締まったウエストをつくります
写真117
頭の後で手を組みます。
写真118
そのまま頭を起こします。ここで10秒止めます。

※肩甲骨が床面から離れる高さまで上がればそれで結構です

実技19 腹直筋トレーニング2
目的
お腹の正面の筋肉を鍛えることで、引き締まったウエストをつくります
 実技18では負荷が強すぎて行い難い場合はこちらを行ってください。

写真119
 写真のように手を組みます。
写真120
 そのまま頭を起こします。ここで10秒止めます。

※肩甲骨が床面から離れる高さまで上がればそれで結構です

実技20 腹斜筋トレーニング1
目的
側腹部の筋肉を鍛え、この部分のたるみの解消を目指します。

写真109
頭の後で手を組みます。
写真110
写真のように体をひねりながら頭を起こします。ここで10秒止めます。
反対側にも同様に行います写真110b


※肩甲骨が床面から離れる高さまで上がればそれで結構です

実技21 腹斜筋トレーニング2
目的
側腹部の筋肉を鍛え、この部分のたるみの解消を目指します。
実技20では負荷が強すぎて行い難い場合はこちらを行ってください。

写真121
膝を曲げて写真のように手を組みます。
写真122
写真のように体をひねりながら頭を起こします。ここで10秒止めます。
反対側にも同様に行います写真122b


※肩甲骨が床面から離れる高さまで上がればそれで結構です

実技22 大胸筋トレーニング
目的
胸の筋肉を鍛え、バストに張りを出します。

写真123
写真のように手を合わせます。
写真124
矢印の方向に両方の手を押します。力いっぱい押してください。ここで10秒止めます。

※ 力いっぱい強く押してください。
この実技を行う時は合わせて大胸筋のストレッチも行ってください(実技13・14・15)

実技追加01
目的:腹横筋・多裂筋などの体幹のコアになる筋肉を複合的に鍛えます

写真追加001
四這いになります

写真追加002
写真追加003
写真のように腕と脚を約45度程度外側に開きながら、上げます。
10~30秒間この姿勢をキープします。

写真追加004
難しければ、写真のように脚だけ上げる運動でも結構です。

実技追加02
目的:腹筋群と腰部の筋肉を鍛えます
写真追加005
できるだけ背すじを伸ばした姿勢で写真のように両膝を持ち上げます。
できれば両手を座面に着けずに行います。

悪い例
写真追加006
写真のように、背中がまるまってしまうとよくありません。


第9章 実技:下肢(脚部)編

実技23 腸腰筋ストレッチ
目的
骨盤の前傾を引き起こす腸腰筋の柔軟性を改善します

写真73
写真のような姿勢をとり、この位置で20~30秒ストレッチします。後ろ側の脚の股関節の前面につっぱりを感じることができれば正しくストレッチされています。

実技24 大腿直筋ストレッチ
目的
 骨盤の前傾を引き起こす大腿直筋の柔軟性を改善します
写真74
横向きに寝ます。下側の脚は軽く曲げておきます。手で足部を持って股関節を後ろに曲げる方向に引っ張ります。太ももの前側につっぱる感覚を感じることができれば正しくストレッチできています。1回20~30秒程度で行います。

実技25 大腿筋膜張筋ストレッチ
目的
 骨盤の前傾や側方への傾斜・O脚などの原因となる大腿筋膜張筋の柔軟性を改善します
手順1写真75
 写真のように壁に手を当て、片膝をつきます。
手順2写真76
 写真のように膝をついた側の脚を内側に倒します。ここで20~30秒ストレッチします。
太ももの外側につっぱりを感じたら上手くできています。

実技26 外側広筋の柔軟性改善
目的
 O脚の原因などになる、太もも外側の外側広筋の柔軟性を改善します。
写真77
椅子に浅めに座ります。
写真78
両方の手でしっかりと太ももを挟みます
写真79
しっかり挟んだまま外側の手を下方向に、内側の手を上方向に動かします。太ももの筋肉をしっかりとはさんで、骨を中心に回転させるような感じです。かなり手に力を入れてください。
写真80、81
膝に近いところから行い、股関節の近くまで、しっかり太ももの筋肉を回転させるように揉んでいきます。特に太ももの外側の筋肉を掌底でしっかり下へ押すようにしてみてください。

実技27 股関節内転筋群ストレッチ
目的
股関節内転筋群の柔軟性を改善して姿勢の改善をはかります
写真82
両方の足の裏を合わせて座る
写真83
上から両方の膝を押す

1回20秒から30秒行います。太ももの内側の筋肉につっぱりを感じたら、上手くできています。体を前傾させると更に負荷を強くすることができます。写真84
実技28 ハムストリングスストレッチ
目的
 骨盤を後方に傾斜させるハムストリングスの柔軟性を改善します

写真85
まずしゃがんで両手を床につけます。
写真86
膝を伸ばして20秒止めます。

写真87
難しい場合は台を置いて行います。太ももの後ろ側につっぱりを感じたらOKです。ふくらはぎにつっぱりを感じる場合はうまくハムストリングスがストレッチされていません。お尻の位置を前後にずらしながら太ももの後ろ側は引っ張られる場所を探してみてください。

実技29 大臀筋ストレッチ(浅層)
目的
 床座位での大臀筋ストレッチが難しい場合に行ってみてください。

写真88(右側大臀筋のストレッチ)
 イスに座り脚を組む
写真89(右側大臀筋のストレッチ)
 体を前に倒す


実技30 臀部挙上運動(ステップ1)
目的
 働きの悪い大臀筋の収縮と弛緩を行います。補助的に広背筋の収縮と弛緩も行います。
写真90 91
膝を立てて寝ます。脇を少し開いて肘を曲げておきます。
写真92
お尻を持ち上げます。肘と上腕で床面を軽く押してお尻を持ち上げるのを助けつつ行います。

これを10回程度行います

実技31 臀部挙上運動(ステップ2)
目的
 働きの悪い大臀筋を働かせます。補助的に広背筋の収縮と弛緩も行います。
ステップ1より負荷が強くなります。
写真93
脚を組んで膝を立てて寝ます。脇を少し開いて肘を曲げておきます。
写真94
お尻を持ち上げます。肘と上腕で床面を軽く押してお尻を持ち上げるのを助けつつ行います。

左右両側を10回ずつ行います

実技32 梨状筋ストレッチ
目的
 股関節の回旋作用を持つ梨状筋の柔軟性を改善します

写真95
 下向きに寝て右脚の膝を曲げます
写真96
 膝を曲げた側の脚を外側に倒します。ここで20~30秒止めます。可能であれば、右足部を手で持ってストレッチのかかりを良くしてあげると良いでしょう。

実技33 腓腹筋ストレッチ
目的
 足のむくみの原因となるふくらはぎの筋肉の柔軟性を改善します
写真97
伸ばすほうの足の足首をしっかりと上にあげて行って下さい。反対側の脚は曲げておきます。ふくらはぎにつっぱりを感じることができれば正しくストレッチできています。1回20~30秒程度で行います。

実技34 下腿三頭筋トレーニング1
目的
 足のむくみの原因となるふくらはぎの筋肉の機能を改善します。

写真98a 98b
写真のように背伸びをします。
この運動を10~20回行います。
運動はゆっくりと行ってください。すばやく行うと十分に筋肉が働きません。

バランスがとれず片脚でうまく運動が行えない場合、写真のように壁や台に手を置いて行っても結構です。ただし、手のほうにはあまり体重がかからないように注意し、しっかりと脚に荷重をかけて運動を行ってください。
写真99a 写真99b


実技35 下腿三頭筋トレーニング2
目的
足のむくみの原因となるふくらはぎの筋肉の機能を改善します。実技34より負荷が強くかかります。

写真100 101
写真のように片脚で立ち、背伸びを行います。この運動を10~20回行います。

写真102 103
バランスがとれず片脚でうまく運動が行えない場合、写真のように壁や台に手を置いて行っても結構です。ただし、手のほうにはあまり体重がかからないように注意し、しっかりと脚に荷重をかけて運動を行ってください。

運動はゆっくりと行ってください。すばやく行うと十分に筋肉が働きません。

実技36 足指屈筋のトレーニング
目的
 衰えがちな足の指の筋肉の機能を改善し、立位動作の安定性の向上を図ります。

写真104a
裸足になり、足のしたにタオルを敷きます。
写真104b
足の指でタオルをグッと掴みます

この運動を10~20回行います。

実技追加03 内転筋トレーニング
目的:太もも内側の筋肉を鍛えて、O脚・ガニ股を改善します

写真追加007・008
座布団やクッションなどを両膝で挟みます。
力いっぱい10秒間両膝で挟み続けます。

実技追加04 内側広筋トレーニング
目的:太もも内側の筋肉を鍛えて、O脚・ガニ股を改善します

写真追加009
足でクッションなどを挟みます。
写真追加010
背すじを伸ばした状態で力いっぱい両脚を伸ばします。
同時に力いっぱい両足でなどを挟みます。
10秒間この姿勢を維持します。


第10章 悪い姿勢がもたらす病態
 ここまでも、悪い姿勢というのはすなわち不健康な姿勢であると説明をして参りました。この章では、実際に姿勢の不良によって直接的にもたらされる病態について紹介していきます。

膝関節痛
 写真5を見てください。第1章などでも紹介した悪い姿勢の典型である「猫背型」の姿勢です。ここで着目して欲しいのは、膝が少し曲がっており伸びきっていない点です。猫背になると、バランスをとるために膝は伸びにくくなるのです。
 今度は図21を見てください。左は正しく膝が伸びきっている場合です。膝関節の構造的な特徴もあり、膝が伸びきっていれば筋肉の働きがほとんどなくても人間は立位姿勢をとることができます。
 次に右の図を見てください。このように膝が少し曲がっている場合、重力の作用により膝はより曲がる方向に力が加わります。これに抗して立位を保つためには、常に膝を伸ばす方向に筋肉を働かせる必要が生じてきます。
 このように常に筋肉が過剰に働くようになると、その筋肉は過剰に緊張して凝り固まります。そして、その過剰に緊張した筋肉にひっぱられて膝関節の内部にある半月板などの組織の位置関係が微妙にずれてしまうのです。そして本来体重がかからないような、痛みに対して敏感な場所に負荷がかかることによって痛みの原因となってしまうのです。

 次は図22を見てください。いわゆるO脚の図です。これは太ももの外側の筋肉が過剰に働き、内側の筋肉の筋力が低下している場合に起こりやすい姿勢です。
 この図のように、O脚になると膝の内側に体重の負荷が集中してしまいます。そのため、膝の内側の軟骨がすり減り、関節の変形を来たしてしまうのです。こうなると当然痛みも現れます。

このような病態のことを「変形性膝関節症」といいます。

股関節痛
 姿勢の不良は股関節痛の原因にもなります。図23を見てください。左は正常な姿勢をとっている場合の股関節の図です。赤い部分が荷重のかかる部分です。通常この関節の最も荷重がかかる部分は軟骨が厚くなっていて衝撃に強い作りになっています。
 図の右側は猫背型の不良姿勢をとった場合の股関節の図です。この図のように、姿勢が悪くなり骨盤の傾きが変わると、本来の荷重がかかる部分とは別の場所に体重がかかるようになってしまいます。本来荷重がかかる部位ではないため、衝撃に強いつくりにはなっていません。こうなると組織の損傷をもたらして関節が破壊され痛みの原因となってしまいます。
 関節の中の問題だけではなく、姿勢の影響を受けて特定の筋肉の緊張が過剰となり、それが痛みの原因となることも多くあります。

 このような病態を「変形性股関節症」といいます。

腰痛
 第4章で腹筋群、特に腹横筋の働きが悪いと猫背や反り腰などの悪い姿勢になりやすいということを紹介しました。

 ここでもう一度同じ図を見てみましょう。正常に腹横筋が働けば図6のように内臓が胸郭を上に押し上げる作用によって、腰に負荷をかけることなく姿勢を保つことができます。
 今度は図6bを見てください。こちらは腹横筋の作用がない場合の図です。このような状態でも背中側の筋肉が強く働けば姿勢を保つことは理論上可能ではありますが、この図を見てもわかるように、テコの支点となる背骨の部分に非常に強い負荷がかかってしまい、これが腰痛の原因となります。実際に腰痛の人は腹部の筋肉の働きが悪いため、反対に背中側の筋肉は過剰に働き過ぎて凝り固まっている人が非常に多くいます。この筋肉の凝り自体が痛みの原因にもなるのです。

 実際には腹部の筋肉の働きが悪いと図6bのように綺麗に姿勢の釣り合いをとることは難しくなり、図7や図8のような悪い姿勢になりがちです。

 腰痛をもたらす病態は、疾患名でいうと変形性腰椎症、腰部の椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などが代表的な疾患なのですが、これらは全て腹部の筋肉の働きの悪さや背中側の筋肉の過剰な緊張、そしてそれによってもたらされる姿勢の悪さから引き起こされることが多い疾患なのです。

肩こり
 肩こりというのは、肩から頚部にかけての筋肉が過剰に緊張した状態のことです。クビの凝りもここでは肩こりに含めます。
 図24を見てください。良い姿勢であれば、軽いS字状に湾曲しながらまっすぐ立った背骨の真上あたりに頭が位置します。このような正しい姿勢をとる場合、頭部の重さを支えるのにあまり筋肉の力を必要としません。背骨の構造が自然と頭部の重量を支えてくれるのです。
 これに対して、猫背型の悪い姿勢をとった場合は図25のようになります。背骨の自然なS字型の湾曲がなくなり、C字型になっています。また、頭の位置が背骨の上に乗っていません。このような姿勢になると、重力で下に落ちようとする頭部を頚部後面の筋肉の力で支える必要が出てきます。頚部の筋肉は横に広がり肩甲骨に付着するものがいくつかあるのですが、その筋肉が過剰に緊張することで頚部から肩にかけての凝りが起こるのです。

 肩から頚部にかけての筋肉の過剰な緊張が続くと、変形性頚椎症や頚部の椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群といった腕や手・指に痺れが出るような神経疾患の原因にもなります。

第11章 姿勢と心理

 姿勢は心理的な影響を受けて変化することが古くから知られています。例えば、落ち込んでいる時や自信のない時などは図26のような姿勢をとりがちです。反対に自信に満ち溢れている時や相手を威圧しようとする時には踏ん反り返った姿勢をとります。
 興味深いのは、姿勢自体が心理状態を変化させるということがわかってきているということです。つまり、図26のような姿勢をとること自体が「落ち込み」や「うつ」などの心理状態を作り出したり、踏ん反り返った姿勢が強気な心理状態を作り出すということです。
 心理状態が姿勢に影響を与えるだけではなく、姿勢が心理状態に影響を与えているということです。

 このような理論は「身体心理学」という心理学の一分野において研究がなされています。この身体心理学の考え方から特に姿勢の調節と関係の深いものについて、2点考察してみます。

1:呼吸と心理状態
 一般的に、強いストレスがかかると呼吸回数が増え、一回あたりの呼吸は浅くなります。反対にリラックスしている場合では一回あたりの呼吸は深くなり、呼吸回数は減少します。

 本書の第5章で紹介したように、呼吸に使用される筋肉の作用は姿勢を形作るうえで重要な意味を持っています。「心理的不安定→呼吸の変化→不良姿勢→更なる心理的不安定」という悪循環が成り立っている人も多いかもしれません。逆説的にいうと、「姿勢の改善→呼吸の変化→心理的な安定」という変化も可能であるということになります。

 呼吸は血液の中に酸素を取り込むための運動です。呼吸状態が変化するということはすなわち血圧や心拍数の変化をもたらすということを意味します。
 血圧や心拍数が変化すると当然、身体の各器官への血液の供給量が変化してきます。最も重要なのは脳への血流量の変化です。「心理状態」というものが理論的には脳で形成されている以上、脳への血流量の変化は当然ながら心理状態の変化をもたらします。

 厳密にいうと、自律神経系の変化や各種ホルモンなど内分泌系の変化なども当然含まれてくると思うのですが、とにかくここで重要なのは、呼吸の変化が脳内の状態に変化を与えて心理状態をも変化させるということは、医学的に見てもまず間違いのないことだと考えられるということです。

2:筋肉の緊張と心理状態
 一般的に、心理的に緊張していると筋肉も緊張してしまうということが知られています。「緊張しすぎて体が硬くなっている」などという言葉を聞くことも多いのではないでしょうか。
 
 このような心理状態からくる筋肉の状態の変化は、自律神経系の影響を考えると医学的にも自然なことであると考えられます。
これは私見ではありますが、この場合の硬くなる筋肉は主に身体の外側の筋肉である浅層筋(アウターマッスル)のことであると考えられます。浅層筋(アウターマッスル)と深層筋(インナーマッスル)については第6章で紹介しましたが、浅層筋(アウターマッスル)が過剰に緊張すると姿勢が悪くなります。

 つまり呼吸の場合と同じで、「心理的不安定→筋肉の過剰な緊張→不良姿勢→更なる心理的不安定」という悪循環が成り立っている人も多いかもしれません。この場合当然ながら「筋肉の状態の改善→姿勢の改善→心理状態の改善」という改善方法も成り立つはずです。

この章の総括
 私が勤務している病院の院内勉強会で心理カウンセラーの講師から講義を受けたことがあるのですが、心理的に問題のある人が腰痛や肩こりを訴えることは非常に多いそうです。
 本章で紹介した内容と第10章で紹介した内容を合わせて考えると、それは当然だと思います。
 もう一度図26を見てみてください。この姿勢は第1章で紹介した悪い姿勢「猫背型」そのものです。このような姿勢が腰痛や肩こりの要因であることは第10章で紹介したとおりです。

 本書の第8章と第9章で紹介した実技の中には呼吸を伴うものや、運動やストレッチなどにより筋肉の質を改善する為の方法が多くあります。
 これらは、この身体心理学という考え方に照らし合わせても有効なものであると考えます。


あとがき
 私はこれまでに腰痛・膝関節痛に関する本と肩こりに関する本を書いてきました。これらの本に共通した内容は、「治療のために最も重要なのは姿勢の改善」であるということです。
本書でも簡単に紹介したように、悪い姿勢は様々な病態を引き起こすのです。そして、腰痛や肩こりなどは日本人に極めて多い病態です。特に病院を受診したりしない人を含めると、そういった病態をもった人は日本人のかなりの割合を占めるのではないでしょうか。逆説的に言うと、それくらい姿勢が悪い人が多いということです。

そして前著である「腰痛・膝関節痛の本」と「肩こりの本」の原稿を書いていて気が付いたことがあります。それは私が書いている原稿の内容と、美容とかダイエットの方法として紹介されている本の内容に非常に共通点が多いということです。
 これは考えてみると当然で、きっと人の脳は健康な肉体を美しいと感じるように出来ているのです。だから、健康に害のあるような悪い姿勢をとっている人を人は美しくないと感じるのでしょう。

 私は理学療法士という仕事をしています。理学療法士とは病院などでリハビリをする仕事です。私は慢性期の患者様のリハビリに携わることが多いのですが、こういった人たちは病気の種類に係わらず、皆姿勢に問題があります。普段の私の仕事の半分くらいはこういった人達の姿勢を改善させることであると言っても過言ではありません。

 様々な理由で姿勢の改善に興味のある人や、そういった情報が必要な人が多いのではないかと考え、今回新たに「姿勢改善」に内容を特化させて本書を書いてみました。この本に書いた私の知識と技術が、一人でも多くの人の役に立つことができれば幸いです。

※得られる結果には個人差があります




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