東大阪の腰痛・ヘルニア 工事中(テスト) - 東大阪市「TN整体院」

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東大阪の腰痛・ヘルニア 工事中(テスト)

読むだけで治る本 腰痛・膝関節痛 編


はじめに

本書を手にとって頂きありがとうございます。これだけは今、是非ここで一度試してみてください。損はさせません。
立ち読みされている人は恥ずかしいと思うので、一度やり方を見てからちょっと人のいない所に移動してやってみてください。

ハムストリングスのストレッチ(強い痛みが出る場合はやめてください)
①まず前屈して自分の手がどこまで届くか確認します。(写真1)
②しゃがんで両方の手のひらを床につけます(写真2)
③手のひらを床につけたまま両足を伸ばせる所まで伸ばします(写真3)
太ももの裏側がひっぱられて少しキツイですが20秒ここで我慢してみてください
④前屈して自分の手がどこまで届くようになったか確認してみてください(写真4)

 どうでしょう。確実に①より④のほうが手が下まで届くようになっていると思います。たった20秒で筋肉の緊張が改善したのです。これは本書の中でもご紹介する関節痛の治療テクニックの一つです。筋肉の柔軟性と関節痛は密接な関連性を有しています。ちなみに、この方法が難しい人に対しても様々な治療方法を紹介しているので、是非ご一読いただきたく思います。


もう一つ実技を紹介しておきましょう。よくテレビなんかでしている、一瞬でウエストのサイズが小さくなるという方法のタネあかしです。ウエストのサイズを測らないと効果がわからないので一人で行うのは少し難しいかもしれません。

一瞬でウエストサイズが小さくなる方法(横隔膜と腹横筋の同時収縮)
①脱力してリラックスした姿勢でウエストサイズを測ります(写真110)
②大きく息を吸いながら背すじを伸ばします。
ここでもう一度ウエストサイズを測ります(写真111)

 どうでしょう。人によっては2センチくらいウエストが細くなる人もあるかと思います。これは腹横筋というお腹を凹ませて内臓を圧迫するための筋肉を働かせた結果です。

テレビなんかに出てきてこういうことを行う人は慣れているので、②のお腹が凹んだままの姿勢を10秒~20秒くらい被験者に無意識に維持させることができます。その間にウエストを測らせているのです。

 インチキのような気もしますが、良い姿勢でいれば常に細いウエストでいることができるということです。逆に悪い姿勢・不良姿勢でいるとお腹の内臓をひきしめる腹横筋が働かないためお腹が前に出っ張るのです。実はこの悪い姿勢・不良姿勢が様々な痛みを引き起こす原因なのです。


私が本書を書こうと思い立った理由
私は病院で理学療法士という仕事をしております。理学療法士というのは病院で運動療法などのリハビリを行う仕事です。対象となる疾患は多いのですが、私が勤務している病院は主に慢性期(発症からかなりの日にちを経た)の患者様を対象にした病院ということもあり、膝や腰の痛みを訴える患者様を診ることが多くあります。
近隣に慢性期のリハビリを行っている施設が他にあまりないため、よくリハビリをしてほしいと依頼や問い合わせを受けるのですが、当院でもマンパワーが不足していることもあり、お断りをしたりキャンセル待ちに登録してもらっているような状態です。

関節痛はその多くが慢性疾患です。長年の悪い姿勢や動作、加齢や運動不足による筋力低下(筋肉の不活動・異常活動・硬化)の積み重ねによって引き起こされています。
治療には専門医の診察を受けてリハビリの指示を出してもらい、理学療法士がその人に応じて個別にプログラムを立てて運動療法や物理療法を行うのが一番です。しかし、残念なことに医療保険制度の問題で慢性期疾患のリハビリを行うことは困難な状況です。

最近関節痛の自己治療法を紹介しているような本をちょくちょく見かけます。しかしリハビリを専門にしているはずの理学療法士によって書かれたものを私は見たことがありません。手間の割に利益が少ないからかもしれません。
そこで今回、我々理学療法士が行っている関節痛の治療法を紹介しようと思い立ちました。本書では、私が普段病院で行っている治療方法を自分一人でもできる方法にアレンジしてご紹介してみようと思います。

病院の中では、医師は診断の後に必要に応じて理学療法士等に対して「リハビリを行うように指示を出す」のがその役割であり、「実際に何をどうするのか」は我々が実際に患者様の身体を検査・評価して決めます。運動をするように指示を出すのが医師であり、どういう運動をさせるかは理学療法士が決めるということです。

まだ痛くない人、是非読んでください
 関節痛で病院に来られる方の年齢層は大抵50代以降です。70代80代になってくると既にかなり症状が進行した状態になっています。関節の破壊が進み運動療法や徒手療法では改善が困難なケースが多い年齢層です。
 どんな病気でもそうなのですが、最も良いのは予防です。30代くらいから姿勢や動作に気をつけてたまにストレッチ程度のことをやっておくだけでその後の人生が大きく変わるのです。未経験の人にはわかりにくいのですが、慢性痛は本当につらいです。
膝関節痛は特に女性に多いので女性は30代から関節痛の予防に努めるべきでしょう。女性は男性に比べて骨盤の横幅が広いため膝に負担がかかる姿勢になりやすいのです。
 あと、肩こりが強い人は大抵姿勢が悪いため将来の関節疾患予備軍です。自覚のある人は注意したほうが良いでしょう。

本書の対象者
 腰・膝が痛い人
 まだ痛くない人:30代以降の女性や肩こりの強い人


本書の構成
本書では第1章で基礎的な関節痛の治療方法の考え方をご説明し、第2章以降で具体的な運動方法をご紹介して参ります。第2章以降では、①痛みの簡単な原因の説明、②運動方法を写真で説明、の2項目に分けて説明して参ります。実用書としては②の運動を行ってもらうことができれば十分です。

 「読むだけで治る本」というタイトルをつけておりますが、本書は治療法の実技を紹介する本です。タイトルの理由は最後に説明するとして、一度サラッと最後まで読んでみてください。あなたの痛みの原因もわかるかもしれません。

第1章 基礎的な考え方

 慢性的な関節の痛みを劇的に改善する方法というのは残念ながらありません。鎮痛剤を打ったりすれば別ですが、当然薬の効き目が切れればまた痛みます。これから各章で各関節の痛みに対する運動方法をご紹介していきますが、本気で痛みを治したいのならば以下の3項目をよく覚えておいてください。

①太っている人はやせてください。関節にかかる体重を減らすことは最も重要です。
②最低でも等間隔で週に3回は行ってください。
③最低でも1ヶ月は続けてください。3ヶ月続けても効果がなければ本書の方法はあなたの状態に合っていないのでやめてください。

 どうでしょう。厳しいですか? ③なんて随分無責任ですよね? 以下、この3項目について少し説明します。

①太っている人はやせてください
 本書では腰痛、膝関節痛の治療方法をご紹介しますが、どちらも体重の影響をもろに受ける場所です。負担を減らすには体重は軽いほうが良いというのは子供にもわかる理屈です。どうすればやせるのか。食べる量を減らせばやせます。この世に太った餓死者はいません。
 以前、「どうすればやせられますかね?」と聞かれた時に半分冗談、半分本気で「晩御飯を食べるのをやめたらやせますよ」と答えたことがあります。そうしたら、その人は晩御飯を食べないことがいかに体に悪いかを私に説明してくれました。どう思います? 食べ過ぎてすでに関節痛を引き起こして体を壊しているのに、食べない方が体に悪いと言うのです。
 もちろん理想は食べる回数を減らすのではなく、一度に食べる量を減らすことです。しかし、それができないのであれば晩御飯を食べずに一食減らした方がマシなのではないかと私は考えます。食事の回数を減らすと太る体質になるとよく聞くことがあるのですが、結局のところ重要なのは摂取カロリーの総量です。
 ダイエットが難しいのは重々承知です。私はお酒とお菓子と揚げ物が大好きです。でも、本気で関節痛を治したいのであれば、減量が重要であるということと、そのためには食事制限が必要であるという事実から目をそらさないでください。

②最低でも等間隔で週に3回は行ってください
 一番はじめにご紹介したハムストリングスのストレッチですが、半日後に同じように前屈をしてみてください。たぶんもとに戻っています。効果のみで言えば週に3回どころか1日3回を毎日行っても良いくらいなのです。
例えばストレッチでいうと、はじめは筋肉を伸ばしてもすぐにもとに戻ってしまいます。これが何日もストレッチを繰り返すと柔軟性が維持されてくるようになります。専門的な言葉を使うと、ストレッチを長期間繰り返すことにより筋肉の受容器の閾値が高くなり筋肉の緊張が低下してくるのです。

しかし誤解しないで頂きたいのは、たまにしかやらない人には意味がないかというと、そういう訳でもないのです。
本書のやり方で自己治療を行えば関節周囲の軟部組織の機能が改善し、簡単にいうとこわばりがほぐれてすぐに痛みが軽くなることがあります。これを改善と捉えるなら、たまに1回するだけでも効果があります。
しかし数時間すると残念ながらまた痛くなります。こういうことを繰り返しながら傷んでいる組織を徐々に治癒させて完治に向かわせるのが本書の治療法です。そのためには最低でも週に3回は行って欲しいと思います。たまにちょっとしただけで痛みが完治する運動療法など絶対にありません。本書は本気で痛みを治したい人に向けた本であることを強調しておきます。

③最低でも1ヶ月は続けてください。3ヶ月続けても効果がなければ本書の方法はあなたの状態に合っていないのでやめてください

 運動療法を行う場合、本来なら医師の診察をもとに私たち理学療法士が患者様ごとに個別にいろいろな検査や評価を行って治療プログラムを立てます。そして経過を診ながら状態に合わせて内容を変更していきます。残念ながら自己治療を行う場合ではこのようなことは不可能です。だから本書の内容があなたの状態に合っているのかどうかはあなたにしかわかりません。
 もし本書の方法で痛みがまったく軽減されない場合、運動方法が合っていない可能性もありますが、運動療法や徒手療法では改善することが不可能な痛みである可能性も高いと思われます。外科的な手術や専用の装具の処方、投薬などの方法により痛みが改善する可能性も高いので専門医の診察を受けてください。

 ちなみに、本書の自己治療法で治療を行うことで関節疾患の進行を食い止め、手術や投薬が必要な状態にまで陥らないようにすることが最も重要です。

 
本書の治療方法と治療概念

 よく関節痛の原因は筋力低下が原因だから治すには筋力を鍛えなければならないと思われています。例えば腰痛では腹筋を鍛えるとか、膝痛なら太ももの筋肉を鍛えるとか。
 この考え方は間違ってはいないのです。確かに筋力が著しく低下した場合にも関節痛は起こります。例えば足の骨折後にギプスをしていてまったく動かすことができないような場合、著しい筋力低下がおこります。ギプスをとって左右の足の太さを比べてみるとその太さの違いがよくわかります。ギプスをしていた方の足は長期間筋肉を使うことができなかったためすっかり痩せ細っているはずです。
こんな場合であれば純粋な筋力低下を原因とする関節痛がおこってもおかしくはありません。しかし、一般的な関節痛はよく使う方の足腰に起こりやすいのです。右膝が痛い人の場合、左側よりも右側の太ももの筋力が強いということは非常に多くあります。むしろ私の経験ではこういうケースが大半です。

 ではなぜ痛みが起こるのでしょうか。それには各関節に特有の事情も多いのですが、簡単に言うと筋肉の不活動と筋肉の活動のしすぎ(過緊張)です。これが起こる原因は姿勢と動作の不良です。これは重要なポイントなので是非おぼえておいてください。
 筋肉の不活動と筋肉の活動のしすぎ(過緊張)の状態になると、関節の中の各組織の配置の微妙なバランスが崩れてしまいます。これが痛みの原因や関節破壊の原因となるのです。あと、活動し過ぎている(過緊張状態の)筋肉はそれ自体が痛みの原因となります。「筋肉が凝りすぎて痛い」という経験をしたことのある人は多いのではないでしょうか。それと同じです。
 
本書で紹介する治療のしかたは、①姿勢と動作の改善、②活動しすぎの筋肉の働きを抑制する(筋緊張の抑制)、③不活動の筋肉を活動させる(筋活動の促通) ④関節内の組織の配置を正常化させるの4つが基本となります。筋力増強を目的とするものは基本的にありません。一見筋力増強を目的としているように見える運動方法もありますが、それは主に③の筋活動の促通を目的としたものです。だから強い負荷をかけて運動するということはありません。

まとめ
 痛みの原因
 1:痛みの原因は筋肉の不活動と筋肉の活動のしすぎ(筋緊張の亢進)
 2:その原因は姿勢と動作の不良
 3:筋肉の活動の異常が関節内の組織の配置のバランスを崩す=痛みが出る
 4:筋緊張の亢進はそれ自体が痛みの原因にもなる

 治療方法
 1:姿勢と動作の改善
2:活動しすぎの筋肉の働きを抑制する(筋緊張の抑制)、
3:不活動の筋肉を活動させる(筋活動の促通) ただし筋力増強ではない
4:関節内の組織の配置を正常化させる


第2章 体幹を整える

第1項 痛みの原因
 なぜあなたの関節が痛いのでしょうか。腰痛にせよ股関節痛にせよ膝関節痛にせよ、関節痛を有する人達にはある共通点があります。それは姿勢が悪いということです。一般的に見てのものではなく、プロから診ての姿勢の悪さです。

前から見た姿勢:重心が左右に片寄っている

 まず体の重心が左右のいずれかに寄ってしまっているということです。写真を見てみてください。写真5:座位 写真6立位 
写真5では鼻先やアゴの先の位置と、両膝の中間の位置が一致していません。写真6では鼻先やアゴの先の位置と両足のつま先の中間が一致しません。これらは体の重心が右に寄ってしまっているということです。パっと見たくらいではこういう小さな左右への片寄りというのはわからないものです。しかし、実はこれが関節痛にとっては非常に重要な意味を持っているのです。
 
こういう重心が右に寄っている人は立ち上がる時はどのようにどのように立ち上がるか。写真の様な立ち上がり方になることが多いのです。写真7:座位 8:臀部離床 9立位
 
ここでは座位姿勢・立位姿勢、あと立ち上がり動作だけを取り上げましたが、ここで取り上げたような人の場合、日常におけるすべての動作が右側に体重が多くかかってしまっているのです。歩くにしても、階段を上り下りするにしても、重い物を持ち上げるにしても。
 当然、どちらの足が悪くなるかは明らかです。こういう人は右側の膝や腰の右側を悪くしやすいのです(腰に関しては左右が逆転することもあります)。何十年もこのような姿勢や動作を繰り返した結果、関節にダメージが蓄積して関節の痛みを引き起こすのです。

左右両方の関節が痛いという人も多く見かけます。しかしよくよく聞いてみると、もとはどちらか片方が痛かったという人や、片方の方が痛みが強いなど左右差がある人が大半です。一方の関節が痛むようになると、反対側の足によけいに体重をかけるようになり、結果として両方の関節が痛くなるのです。このような場合、大抵ははじめに痛めた側の関節のほうが関節破壊は進行しています。

 多くの人は右利きであるため、骨折などケガの既往がない人の多くは右側に重心が寄っていることが多いようです。だから腰から下の関節痛は私の経験では右側に特に多いように思われます。(腰は真ん中や反対に左側が痛い人も多いです)

 ちなみに、写真では左右差がわかりやすくなるようにわざと右側への片寄りを大きくしています。実際にはパっと見た程度ではわかりにくい程度の差がほとんどです。

横からみた姿勢:背骨の形が悪い(猫背や腰の反り過ぎ)

 関節痛を有する人は左右だけでなく前後方向にも姿勢が片寄っています。こちらは片寄っているという表現は適切でないかもしれません。以下に関節に痛みのある人に多い姿勢を4つ挙げてみました。

①最も多い「猫背」写真10 
背中が丸くなると普通の人にはある腰の反りがなくなります。また立位ではバランスをとるために必然的に膝がわずかに前に出ます。膝関節が伸びきらずにわずかに曲がった姿勢になるのです。この時、股関節もわずかに曲がってしまいます。これが各関節に非常に悪いのです。その理由は以後の章で詳述します。

②腰とおなかを前に出しすぎている姿勢写真11 
この姿勢は腰の反りが強くなりすぎて腰痛を起こしやすい姿勢です。またこの姿勢でも膝が少し曲がってしまいます。膝痛の原因になります。股関節の位置も正常ではありません。俗にビール腹などと呼ばれるようなお腹が出た人によく見られます。妊婦さんにも多い姿勢です。

③腰の反りが強く重心が前方にある姿勢。写真12
この姿勢では腰の反りが異常に大きく、股関節と膝関節が少し曲がっています。これも各関節に負担が強く痛みを引き起こす姿勢です。

④一見とても綺麗な姿勢。写真13 
よく見ると腰の反りが大きすぎです。腰痛を起こしやすい姿勢です。おなかの筋肉の活動に比して背中の筋肉を過剰に働かした場合このような姿勢になります。意識的に力をいれて良い姿勢を作ろうとした場合になりやすい姿勢です。またヒールの高い靴を履いた場合になりやすい姿勢でもあります。

 こちらも写真ではそれぞれの姿勢の種類がわかりやすいよう、わざと姿勢の特徴をわかりやすく表現しています。実際にはパっと見た程度ではわかりにくい程度の差がほとんどです。
 
 ①から④の姿勢を見てどう思いますか? ④以外はお年寄りに多い姿勢です。こんな姿勢のお年寄りを見ること、多くないですか? まさにこれが高齢者に関節痛が多い原因なのです。中年くらいの人ではちょっと見たくらいではこのような姿勢の特徴はわかりにくいと思います。むしろ素人が見たくらいでは全然わからない程度の姿勢不良が大半です。それは各姿勢の特徴が小さいからわかりにくいだけです。放っておくとその特徴は年々大きくなり、やがて高齢者になる頃には①から③のようなわかりやすい高齢者の姿勢になっているのです。ちなみに④の姿勢は将来②や③の姿勢になりやすいと思われます。


第2項 実技
この章で紹介する運動は、腰痛・膝関節痛いずれの治療にも必要な運動です。以降の各章で紹介する方法を行う前、もしくはその途中でも後でも良いので必ず行ってください。

この章での実技では全身を写せるような大きな鏡を見ながらできると最良です。そういう大きな鏡がない場合は痛みのない側・少ない側へ(右膝が痛い場合は左側へ)の体重移動が大きくなるよう意識して運動を行ってみてください。
実際には左右に同じだけ動かすのですが、体に染み付いたクセの影響で痛みの少ない側への体重移動は難しいのでそのように意識して行います。

実技1:座位での体重移動練習(前後)
 目的:腹横筋と横隔膜を使いながら理想的な座位姿勢になるように体幹の筋肉の活動を調整する


写真14
リラックスしてまっすぐにすわります。多少猫背になっていてもかまいません。上から見て膝の位置に差がないかどうかを確認します。片方の膝が前に出ているような場合、体がねじれていますので修正してください。写真15
 体のねじれを修正した場合、体の感覚に違和感があるかもしれません。しかしそれで結構です。違和感を感じること自体が重要です。

写真16
大きく息を吸いながら背筋を伸ばし、胸を張ります。

写真17
息を吐きながらもとの姿勢に戻します。

ポイント
写真14と16を3回から5回繰り返します。決して急がずに、ゆっくり動作を行ってください。動作が速いとダメです。あと、お尻で体重の位置を感じながら行うと更に良いです。写真14の位置では体重はお尻の後方に、写真16の位置では体重はお尻の前方に移動するはずです。是非それを感じながら運動を行ってみてください。

あと、この運動で大切なポイントは左右のお尻に均等に体重がかかった状態で行うことです。

実技2:座位での体重移動練習(左右)
 目的:左右に同じだけ体重を移動することで体の重心の片寄りを治す

写真18
リラックスしてまっすぐにすわります。多少猫背になっていてもかまいません。
上から見て膝の位置に差がないかどうかを確認します。片方の膝が前に出ているような場合、体がねじれていますので修正してください。写真19
 体のねじれを修正した場合、体の感覚に違和感があるかもしれません。しかしそれで結構です。違和感を感じること自体が重要です。

写真20
 背筋を伸ばして息を吸いながら右側のお尻に体重を移動します。左右の肩の高さが同じようにしてください。左右の位置が床面に対して水平になるように行います。

写真18の位置にもどす

写真21
 左側にも同様に体重を移動します。左側のお尻に体重がかかります。大切なのは、右側と同じ分だけ左に動かしてください。もしそれが難しければ右側への移動量を減らして左側に移動するのと同じ程度にして運動を行います。

悪い例
 片方の側の肩の高さが上がったり下がったりしてはいけません。これは立位で行う場合でも同じです。
 写真22 体重をかけた方の肩が下がる
 写真23 体重をかけたほうの肩が上がりすぎる。

ポイント
 左右の肩の高さは背骨の運動で調整します。片方の肩の筋肉をすぼめたりして調整しては意味がありません。
 この運動をゆっくりと左右ともに3回から5回程度繰り返します。体重をかけにくい方向に多めに行っても結構です。

実技3:立位での体重移動練習(中央)
 目的:腹横筋と横隔膜を使いながら理想的な立位姿勢になるように体幹と脚の筋肉の活動を調整する

写真24
左右の足に均等に体重をかけてリラックスして立ちます。多少猫背でも構いません。

 写真25
 大きく息を吸いながら背筋を伸ばします。

ポイント
 写真24と25を3回から5回繰り返し行います。左右の足に常に均等に体重がかかっているよう注意してください。

実技4:立位での体重移動練習(左右)
目的:左右の脚に同じだけ体重を移動することで体の重心の片寄りを治す
 
写真26
肩幅くらいに足を開き、左右の足に均等に体重をかけてリラックスして立ちます。多少猫背でも構いません。

 写真27
 息を吸いながら背筋を伸ばし右側の足に体重をかけていきます。右足一本でも体重が支えられそうな位置まで体重を右側に移動します。左足は床につけておきますが、多少左側の踵が浮いてしまっても構いません。この時左右の肩の高さが同じになるよう注意します。

 写真26の位置にもどす

 写真28
息を吸いながら背すじを伸ばし左側の足に体重をかけていきます。左足一本でも体重が支えられそうな位置まで体重を左側に移動します。右足は床につけておきますが、多少右側の踵が浮いてしまっても構いません。基本的には右側へ移動した時と同じだけ左に移動します。この時も左右の肩の高さが同じになるよう注意します。

ポイント
ゆっくりと3回から5回行います。体重をかけにくい方向に多めに行っても結構です。左右の肩の高さは背骨の運動で調整します。片方の肩の筋肉をすぼめたりして調整しては意味がありません。

悪い例
 片方の側の肩の高さが上がったり下がったりしてはいけません。
 写真29 体重をかけた方の肩が下がる
 写真30 体重をかけたほうの肩が上がりすぎる。

実技5:立位での体重移動練習(手を組んで上下に)
 目的:手を上に挙げる動作を加えることで肋骨と肋骨の間の組織や肋骨と背骨を繋ぐ関節(肋椎関節)を動かす
写真31
手を組み左右の足に均等に体重をかけてリラックスして立ちます。多少猫背でも構いません。

 写真32
 組んだ手を上げながら大きく息を吸いながら背筋を伸ばします。

ポイント
 写真31と32を3回から5回繰り返し行います。左右の足に常に均等に体重がかかっているよう注意してください。

実技6:立位での体重移動練習(手を組んで左右に)
目的:手を上に挙げる動作を加えることで肋骨と肋骨の間の組織や肋骨と背骨を繋ぐ関節(肋椎関節)を動かす。右脚に過重した場合は右側の肋骨がより大きく動く。反対側も同様。

 写真33
手を組み肩幅くらいに足を開き、左右の足に均等に体重をかけてリラックスして立ちます。多少猫背でも構いません。

 写真34
 息を吸いながら組んだ手を上げ、背筋を伸ばし右側の足に体重をかけていきます。右脚一本でも体重が支えられそうな位置まで体重を右側に移動します。左足は床につけておきますが、多少左側の踵が浮いてしまっても構いません。この時左右の肩の高さが同じになるよう注意します。

 写真33の位置にもどす

 写真35
息を吸いながら組んだ手を上げ、背筋を伸ばし左側の足に体重をかけていきます。左脚一本でも体重が支えられそうな位置まで体重を左側に移動します。右足は床につけておきますが、多少右側の踵が浮いてしまっても構いません。基本的には右側へ移動した時
と同じだけ左に移動します。この時も左右の肩の高さが同じになるよう注意します。

ポイント
ゆっくりと3回から5回行います。体重をかけにくい方向に多めに行っても結構です。


※ この章の実技の注意
各運動は、すばやくキビキビと行うのではなく、ゆるやかに滑らかに行ってください。
  呼吸をしながら行うものが多いため、過呼吸にならないように気をつけてください。

本章実技の解説

 人間は背中の背筋とお腹の腹筋で背骨を縦に支えています。支える力が足りないと重力に負けて背骨が前に曲がります。腹筋の働きが弱くなると背中側の筋肉のみで背骨を支えることになります。これが非常に腰に負担が強いのです。
 また、背中側の筋肉だけでは背骨を支えきれないことが多く、そういう場合少し上体が前に倒れます。これが本章第1項で紹介した写真10の姿勢です。反対に背中の筋肉のみが異常に働き過ぎた場合には腰が反ってしまい写真11や写真12や写真13のような姿勢になります。
 共通するのはどれも腹筋の働きが悪いということです。いわゆる腹筋運動をして筋力をつけてもこれは改善しません。なぜなら、腹筋運動で使われるのは腹直筋という筋肉なのに対し、この場合に重要なのは腹横筋という筋肉だからです。

図1
腹横筋の働きがないと背中側の筋肉のみで背骨を支えるために背中の筋肉は過剰に働きます。テコの支点となる背骨には大きな圧力が加わり腰痛の原因となります。また働き過ぎの背中側の筋肉が過緊張状態になり、それ自体が痛みとなります。
腹横筋が働くと内臓を圧迫します。圧迫された内臓の圧力は上と下に逃げます。この内臓の圧力が胸郭を支えるため背骨への負担も小さくなりますし、背中側の筋肉も過剰に働く必要がなくなります。この内臓への圧力のことを腹圧といいます。
胸郭の下面は横隔膜です。膜という名前ですが、これは人が息を吸う時に働く筋肉です。この横隔膜と腹横筋が連動して働くことで、人は本来腰への負担を小さくしつつもしっかりと背骨を支えることができているのです。

 実技1、3、5は横隔膜や腹横筋を使って主に前後方向へのゆがみ、つまり横から見た時の姿勢を改善するための運動です。これに対して、実技2、4、6は左右方向つまり前から見た時の姿勢を改善するための運動です。

 実技2、4、6の運動も腹横筋や横隔膜を活動させつつ行うという点には変わりないのですが、それにプラスしてこれらの運動には体重を左右に同じだけ動かしつつ左右の片寄りをなくすということや、良い姿勢を保ちつつ片足でバランスよく体重を支えるということを目的としています。
 人間は2本足で歩きます。歩行中は左右どちらの足も必ず片足で体重を支える期間が生じます。もし右足と左足で同じように体重を支えることができないとどうなるでしょう。答えを言ってしまうと、歩く時に右足と左足の片脚での立脚期の長さ(体重を支える時間の長さ)に差が出てくるのです。
負担のかかりかたに差が出れば、当然負担の多くかかるほうの関節は破壊され、痛みを生じます。素人が見た場合、関節痛がかなり進行した場合でないとこの差は分からないような程度の差であることが多いのですが、歩行は何十年もの間、毎日かなりの数を繰り返す動作なのでその蓄積は膨大なのです。
 歩行に限らず、立ち上がりや段差昇降、手を伸ばして物を取るような動作など、体重のかかり方の左右差が関節に影響を及ぼす動作は数えきれません。それを改善するための一番はじめの基本が座位と立位での姿勢の左右差をなくすことなのです。

 実技5、6では手を組んで上に挙げる運動を加えました。手を上に挙げると肋骨と背骨を繋ぐ関節(肋椎関節)が動かされ、自然と肋骨と肋骨の間が広がります。専門的に言うと胸郭が広がると言います。
姿勢の悪い人は肋骨の周辺の組織が硬くなっている人が多いのです。息を吸った時に十分に胸郭が広がらないと呼吸が浅くなり、持久力が落ちてちょっとした運動で息があがりやすくなります。また、正しい姿勢や動作を阻害する要因にもなるため、関節の痛みにも影響を及ぼすのです。あと直接的にはこれが肋間神経痛の原因にもなります。
 

第3章 膝関節痛

第1項

前章では不良姿勢が関節に悪影響を与えることを説明しました。それでは具体的に、膝にはどのような影響を与えるのでしょうか。

不良姿勢はこれらのすべてを誘発する原因です。

本章第2項で紹介する実技はこれらの改善を目的としたものです。

第2項 実技

実技6 滑液包の圧擦(鵞足部)
    ハムストリングスのストレッチの前に行います
目的:筋肉の動きをなめらかにする滑液の入った包みを刺激して筋肉を伸ばしやすくします
写真37
写真の位置を指の腹で円を描くように30秒ほど揉みます。脛の骨のやや内側で、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(脛の骨)とのすき間から約5cmほど下の部分です。わかりにくい場所なので少し広めの範囲を円を描くようにマッサージします。

実技7 膝窩筋マッサージ
半月板を後方にずらす膝窩筋の過緊張を改善します。
写真38
膝を伸ばした状態で膝の裏側を指で30秒ほどマッサージします。

実技8 ハムストリングスストレッチ 立位
目的
 半月板を後方にずらすハムストリングスの過緊張を改善します

写真39
まずしゃがんで両手を床につけます。
写真40
膝を伸ばして20秒止めます。

写真41
難しい場合は台を置いて行います。太ももの後ろ側につっぱりを感じたらOKです。ふくらはぎにつっぱりを感じる場合はうまくストレッチされていません。お尻の位置を前後にずらしながら太ももの後ろ側は引っ張られる場所を探してみてください。

実技9 ハムストリングスのストレッチ(座位)
目的
 立位でのストレッチが困難な場合に行います
写真42
立位でのストレッチを行うのが難しい場合や不可が強すぎると感じる場合には座位で行います。伸ばすほうの足の足首を下にさげて行って下さい。反対側の脚は曲げておきます。1回20~30秒程度で行います。

実技10 腓腹筋ストレッチ
目的
 膝を曲げる作用をもった腓腹筋の過緊張を改善します
写真43
伸ばすほうの足の足首をしっかりと上にあげて行って下さい。反対側の脚は曲げておきます。ふくらはぎにつっぱりを感じることができれば正しくストレッチできています。1回20~30秒程度で行います。

実技11 大腿直筋ストレッチ
目的
 過剰に緊張した大腿直筋の緊張を改善します
写真44
横向きに寝ます。下側の脚は軽く曲げておきます。手で足部を持って股関節を後ろに曲げる方向に引っ張ります。太ももの前側につっぱる感覚を感じることができれば正しくストレッチできています。1回20~30秒程度で行います。

実技12 大腿筋膜張筋ストレッチ
目的
 過剰に緊張した大腿筋膜張筋の緊張を改善します
写真45
立位で写真の姿勢で行います。ストレッチする方の脚を内側後ろ側に持っていきます。太ももの横側につっぱりを感じることができていれば正しくストレッチできています。1回20~30秒程度で行います。

実技13 腸腰筋ストレッチ
目的
不良姿勢を誘発しやすい腸腰筋の過緊張を改善します

写真46
後ろ側の脚の股関節の前面につっぱりを感じることができれば正しくストレッチされています。


実技14 外側広筋の柔軟性改善
目的
 過剰に緊張した外側広筋の柔軟性を改善します。
写真47
椅子に浅めに座ります。
写真48
両方の手でしっかりと太ももを挟みます
写真49
しっかり挟んだまま外側の手を下方向に、内側の手を上方向に動かします。太ももの筋肉をしっかりとはさんで、骨を中心に回転させるような感じです。かなり手に力を入れてください。
写真50、51
膝に近いところから行い、股関節の近くまで、しっかり太ももの筋肉を回転させるように揉んでいきます。特に太ももの外側の筋肉を掌底でしっかり下へ押すようにしてみてください。

実技15 パテラセッティング変法
目的
 膝蓋下脂肪体という組織の柔軟性を改善します

写真52
椅子に浅く座り膝を30°~40°くらいに浅めに曲げます。
写真53
膝のお皿を掌底で少し体重をかけながら押します。
写真54
イチ、ニの、サン! というような感じでリズミカルに膝をすばやく伸ばします。膝を伸ばすときに膝のお皿が上に移動するのを手で感じることができたら正しくできています。10回程度行います。しっかりと膝のお皿を下に押し込むことと、膝を伸ばした時にポーンと勢いよく膝のお皿を上に移動させることがポイントです。

実技16 大腿直筋を抑制しての膝伸展運動
目的
 働きの悪い中間広筋を働かせるために行います
写真55
膝を90°くらいに曲げた姿勢で椅子に座ります。
写真56
太ももの真ん中を両手の親指で押します。押す位置は膝の先端から12~13センチのところ。握りこぶし一個半くらいのところです。多少ずれてもかまいません。
写真57
太ももを両手の親指で押しながら3秒くらいかけてゆっくり伸ばします。伸びきったら今度は3秒くらいかけてゆっくり降ろします。10回から30回行います。

実技17 内側広筋を使用した膝伸展運動
目的
 働きの悪い内側広筋を働かせるために行います
写真58
椅子に座り両膝で枕をはさみます。はさむのは座布団などでもかまいません。
写真59
そのまま膝を3秒くらいかけてゆっくり伸ばします。伸びきったら同じく3秒くらいかけてゆっくり降ろします。10回から30回行います。

実技18 膝屈曲運動
 目的
  ハムストリングスの収縮と弛緩を促し筋緊張の正常化をはかります
写真60
 腹這いで寝ます
写真61
 3秒くらいかけながらゆっくりと床面と垂直になる角度(90°)まで膝を曲げます。
 3秒くらいかけてゆっくりと床に脚をおろします。

※実技16・17・18では負荷が軽すぎて運動をしている感じがしないようなら足首に軽めの重りを巻きつけて行ってみても良いでしょう。ただし筋力増強のための運動ではないので、重すぎる重りをつけるとかえって逆効果になります。


第4章 腰痛

第1項

 まず不良姿勢が腰に与える影響から考えます。背骨(脊柱)は理想的な姿勢をとっている場合、ゆるやかなカーブを描くS字状の形態をしています。腰の部分は前方を凸にして軽く湾曲しています。図4

第2章でも第3章でも見た不良姿勢です。くどいようですがもう一度見てみましょう。

①最も多い「猫背」写真10 
②腰とおなかを前に出しすぎている姿勢写真11 
③腰の反りが強く重心が前方にある姿勢。写真12
④一見とても綺麗な姿勢。写真13 

①の姿勢では腰の湾曲が後方を凸にした湾曲に変わってしまっています。本来S字状である背骨のカーブがC字状になってしまっています。

②③④ではいずれも腰の反りが強くなりすぎています。

 これはどちらも腰痛を引き起こす原因となる姿勢です。腰の湾曲は大きくても小さくても(後方に凸になっても)いけないのです。この理由はいろいろあるのですが(本当にたくさんあります)、私が最も重要であると考える点を一つご説明しておきます。

 ①②③④のいずれの姿勢についても言える共通点は、腹部の筋肉(主に腹横筋)の働きが悪いという点です。
①の場合では腹部の筋肉の働きが弱いために十分に上半身の体重を支えることができず前のめりに倒れてしまっているのです。それでも完全に前に倒れるわけにはいかないため背中側の筋肉の力により釣り合いをとってかろうじて姿勢を維持している状態です。
 ②③④の場合は腹部の筋肉による前方からの支持ができないために背中側の筋肉が過剰に働いています。背中側の筋肉が働き過ぎて体が後ろ側に反ってしまっているのです。

 理想的な姿勢をとる場合、腹横筋が働き(腹横筋はお腹をへこませる筋肉)内臓を前から圧迫します。圧迫された内臓は後ろ側にも壁があるために上下方向に圧力が広がります。これが体を支える力として作用して、過度に背中側の筋肉の力を使うことなく姿勢を支えているのです。

 腹横筋が正常に作用しない場合、相対的に背中側の筋肉が過剰に働いて姿勢を維持せざるを得なくなります。この時テコの支点となる脊柱(背骨)に非常に強い圧力が加わるのです。図5
 
痛みの原因部位1:脊柱

 腰痛患者が病院で医師に診てもらうと大抵の場合、変形性腰椎症や椎間板ヘルニアといった診断名をつけられます。変形性腰椎症も椎間板ヘルニアもこれが起こる原因として重要なのは背中側の筋肉の過緊張と腹部の筋肉(主に腹横筋)の活動不足です。
 背骨は椎骨という小さな骨がたくさん連なってできています。椎骨と椎骨の間には椎間板という柔軟性をもった軟部組織が挟まっています。このような椎骨と椎間板の連続体を脊柱と言います。一般にいう背骨のことです。図6左
椎骨には棘突起という出っ張りがついており、その上下の棘突起と棘突起は小さな靭帯や筋肉などの軟部組織によってつながっています。

 体を前傾させるとき、脊柱は複数の椎骨に挟まった複数の椎間板の前方が少しずつ潰れることにより脊柱が前方に曲がります。図6中央 この時、棘突起と棘突起の間を結ぶ軟部組織も少しずつ伸びます。

 腹部の筋肉の働きが弱く背中側の筋肉の緊張が強い状態で体を前傾する場合、脊柱の中で一箇所だけ大きく過剰に動いてしまう部位が現れます。背中側の筋肉の過緊張によって背骨を後ろに曲げる力が働いているのに無理に前方に曲げようとするため、図5のテコの支点になりやすい場所にだけ力が集中してしまい、そこだけ過剰に曲がってしまうのです。逆に他の部分は背中側の筋肉に引っ張られて前に曲がりにくくなっています。

 言い方を変えると、背中側の筋肉の過緊張により背骨が前に曲がりにくくなっているため、無理に曲げると真ん中で背骨が折れてしまうようなイメージです。図6右

具体的には腰椎の4番付近がこの位置です。図7 場所には個人差がかなりありますが、この辺りに痛みを訴える人は実際に腰痛患者のかなりの割合を占めます。

 この、腰椎の一箇所だけ過剰に曲がる部分の椎間板はその圧力によって椎間板の前側が大きくつぶされます。すると椎間板の中身である髄核という組織が後ろ側に押し出されてしまいます。これが椎間板ヘルニアです。

 また、棘突起と棘突起を結んでいる靭帯や小さな筋肉などの軟部組織もこの部分だけ過剰に引っ張られるために損傷します。体を軽く曲げて横向きに寝て、背中の真ん中の突起部分と突起部分の間を上から順に押してみてください。人によっては強い痛みがあります。痛みがある人はまさにこの部分の組織が傷ついているのです。
 椎間板ヘルニアにまではならなくても椎骨のまわりの組織(棘突起の間以外にもいろいろな組織がついているのですが)が損傷することで腰痛はおこります。この様な状態の人は普通、病院で受診すると変形性腰椎症という診断名をつけられます。椎間板ヘルニアにせよ変形性腰椎症状にせよ、腰の左右の真ん中だけではなく右側や左側に痛みが出ることも多くあります。組織の傷め方や姿勢の左右差などによると考えられます。

他に脊柱管狭窄症という名前の病態もあります。脊柱管狭窄症は主に加齢などによって椎骨と椎間板に変成がおこり、脊柱の中を通っている「脊髄」という中枢神経が圧迫されて痛みや痺れがおこります。抹消の神経根という部分の圧迫による痺れである場合も多くあります。変成の原因の一つに腹部の筋肉の活動低下と背中側の筋肉の過緊張による脊柱の縦方向への圧力の増大が考えられます。

まとめ:脊柱由来の痛み
 椎間板ヘルニア
 変形性脊椎症(腰椎症)
 脊柱管狭窄症
  ※比較的多くみられるものを挙げましたが、他にも数多く痛みの原因はあります。


痛みの原因部位2:仙腸関節

仙腸関節とは骨盤を構成する骨のうち仙骨と腸骨という二つの骨の間にある関節です。この関節は関節であって関節でない、半関節とも呼ばれます。ほとんど可動性がなく動かないのですが、わずかに動くのです。主にお辞儀をするような形、前後にうなずくような動きをする作用があります。
この関節が原因で痛みが生じている場合、骨盤あたりの高さで、左右の片側に痛みを感じることが多いようです。両側が痛む場合でも左右で痛みの強さに差があることが多いようです。不良姿勢のなかでも特に第2章で紹介した左右への姿勢の偏りが多い場合に多く見受けられます。

鑑別方法としては上後腸骨棘という仙骨と腸骨の境目の場所に痛みが現れる場合はこの仙腸関節が痛みの原因として考えられます。 写真62 図8

仙腸関節由来の痛みである場合、この上後腸骨棘の部分を指先で強く押した場合に痛みが出ることが多く、鑑別方法として用いられることもあります。また痛む側の腰を下にして横向きに寝た場合に痛みが強くなる場合があります。

痛みについてのまとめ

 痛みの原因が脊柱・仙腸関節いずれであれ、痛みが生じると周辺の筋肉の緊張が上がります。腰痛の場合は周辺の筋肉というのが背中の筋肉であるため、非常にタチが悪いのです。背中側の筋肉の過緊張が原因で痛みが生じているのに、痛むとさらに背中側の筋肉が緊張してしまうのです。もともとの痛みを悪化させるだけではなく、筋肉の緊張それ自体が痛みとして感知されるようにもなってしまうのです。

いずれの痛みに対しても、不良姿勢の改善と周辺の筋肉の働きの正常化が不可欠です。

痺れについて
 腰痛に脚の痺れが伴う場合、以下の3つのうちのどれか、もしくは複合したものである可能性が高いと考えられます。

1:椎間板ヘルニア
2:坐骨神経痛
3:脊柱管狭窄症

1:椎間板ヘルニア
 椎間板ヘルニアでは圧力により後方に押し出された髄核という組織が神経を圧迫して痺れを引き起こします。痺れは左右両側におこる場合と、いずれか片側のみにおこる場合があります。本章で紹介する腰椎の持続進展運動などにより改善する可能性があります。ただし、しびれの種類によっては悪化する場合もあるため、説明をよく読んだ上で行ってください。 

2:坐骨神経痛
 坐骨神経痛が原因である場合、骨盤付近で側を通っている梨状筋という筋肉の過緊張に由来している可能性があります。本章で紹介する梨状筋への各種アプローチにより改善する可能性があります。

3:脊柱管狭窄症
 痛みのところで説明した通り、脊髄が圧迫されることなどにより痛みが生じます。
脊柱管狭窄症の改善には腹部の筋肉を活動させること、背中側の筋肉の緊張を抑制することが重要です。それは不良姿勢を改善することと同義です。
 腰を反らせる運動(腰椎の進展)で痛みや痺れが強くなる傾向があるため、間違って椎間板ヘルニアの治療を行うとかえって症状が悪化するおそれがあります。


第2項 実技

・実際に行ってみて腰痛や痺れが強くなるような場合には行わないでください。
・ストレッチにより筋肉が伸ばされて多少痛い分には構いません。

実技19 恥骨包マッサージ
目的
 筋肉の動きをなめらかにする滑液の入った包みを刺激して筋肉を伸ばしやすくします
写真63
写真の位置:股関節の付け根辺りの前面を指先で30秒ほどマッサージします

実技20 内転筋群ストレッチ
目的
股関節内転筋群の緊張を改善して姿勢の改善をはかります
写真64
両方の足の裏を合わせて座る
写真65
上から両方の膝を押す

1回20秒から30秒行います

実技21 大腿筋膜張筋ストレッチ
第3章参照

実技22 腸腰筋ストレッチ
第3章参照

実技23 腸腰筋を働かせる運動
目的
働きの悪い腸腰筋を働かせます
写真66
 背筋を伸ばして座ります。できれば少しイスの座面を少し高くします。
写真67 67b 67c
 太ももを上にあげます。左右交互に20~50回行います。 

悪い例1:写真68
 背中が丸くなり骨盤が後ろに倒れる
悪い例2:写真69
 上げる脚がまっすぐ上にあがらず外側を向く
悪い例3:写真70
上げる脚がまっすぐ上にあがらず内側を向く

実技24 大臀筋ストレッチ(床座位)
目的
 股関節の屈曲(前に曲がる)方向への阻害要因となる大臀筋の柔軟性を改善する。

写真71 (右側大臀筋のストレッチ)
床に座って脚を組む
写真72 (右側大臀筋のストレッチ)
体を前に倒す
 股関節の後面から太ももの上の方の裏側にかけてつっぱりを感じることができれば正しくできています。

実技25 大臀筋ストレッチ(イス座位)
目的
 床座位での大臀筋ストレッチが難しい場合に行ってみてください。

写真73(右側大臀筋のストレッチ)
 イスに座り脚を組む
写真74(右側大臀筋のストレッチ)
 体を前に倒す

実技26 臀部挙上運動(ステップ1)
目的
 働きの悪い大臀筋の収縮と弛緩を行います。補助的に広背筋の収縮と弛緩も行います。
写真75 75b
膝を立てて寝ます。脇を少し開いて肘を曲げておきます。
写真76
お尻を持ち上げます。肘と上腕で床面を軽く押してお尻を持ち上げるのを助けつつ行います。

これを10回程度行います

実技27 臀部挙上運動(ステップ2)
目的
 働きの悪い大臀筋を働かせます。補助的に広背筋の収縮と弛緩も行います。
ステップ1より負荷が強くなります。
写真77
脚を組んで膝を立てて寝ます。脇を少し開いて肘を曲げておきます。
写真78
お尻を持ち上げます。肘と上腕で床面を軽く押してお尻を持ち上げるのを助けつつ行います。

左右両側を10回ずつ行います

実技28 腹式呼吸の練習:臥位 ※重要!
目的
 働きの悪い腹横筋を働かせます
写真79
 上向きに寝て両手をお腹に当てます。すこし足は曲げておきます。
写真80
 鼻から大きく息を吸います。息を吸った時にお腹が膨らむように呼吸します。
写真81
 10秒以上時間をかけて口から息を吐きます。息を吐いた時にお腹が凹むように呼吸します。少し苦しいかもしれませんが、できるだけ細く長く息が吐けるように口をすぼめて息を吐ききります。写真追加01

これを5~10回程度行います。過呼吸にならないように注意して回数を調整します。

実技29 腹式呼吸の練習:座位 ※重要!
目的:臥位での腹式呼吸に慣れたら座位で行います。どこでもできるのでこの実技だけでもよいので1日に2~3セットを毎日行うのが理想です。

写真追加02
 背もたれにもたれずにイスに座ります。両手をお腹に当てます。
写真追加03
 鼻から大きく息を吸います。息を吸った時にお腹が膨らむように呼吸します。
写真追加04
 10秒以上時間をかけて口から息を吐きます。息を吐いた時にお腹が凹むように呼吸します。少し苦しいかもしれませんが、できるだけ細く長く息が吐けるように口をすぼめて息を吐ききります。写真追加01

これを5~10回程度行います。過呼吸にならないように注意して回数を調整します。

実技30 臥位での体幹回旋運動
目的
 体幹の回旋運動を阻害する筋肉の緊張を抑制します

写真82
 膝を立てて寝ます
写真83
 膝を右に倒します
写真84
 反対方向(左側)に倒します

5~10回行います

実技31 体幹回旋ストレッチ
目的
 体幹回旋を阻害する筋肉の柔軟性を改善します

①右側へのストレッチ
写真85
 寝て脚を組みます。右脚が上になります。
写真86
 組んだ脚を左側に倒します
1回20~30秒行います

②左側へのストレッチ
写真87
 寝て脚を組みます。左脚が上になります。
写真88
 組んだ脚を右側に倒します
1回20~30秒行います

動かしてみて硬いと感じる方向に多めに行っても結構です。

実技32 立位での体幹回旋運動
目的
 立位で過重をかけながら体の回旋を行うことで腹部と背部の筋肉の働きを調整します

写真89
左右の脚に均等に体重を乗せ、左右対称の姿勢で立位をとります。
写真90
 大きく息を吸いながら右側の脚に体重を乗せます。この時、両肩の位置は床面と水平になるように注意します。どちらかの肩が上がったり下がったりしてはいけません。
写真91
 良い姿勢を保ちながら右側に体を回旋します。この時も左右の肩の位置は床面と水平、どちらかの肩が上がったり下がったりしてはいけません。

写真92
写真93
 反対側にも同様のことを行います。

左右に3回~5回ずつ行います。やりにくい方向に多めに行っても結構です。


※実技33・34・35は坐骨神経痛がある場合に行います
実技33 梨状筋の緊張抑制(座位)
目的
 坐骨神経痛がある時に試みます
写真94
 浅めにイスに座り、片脚を伸ばします。
写真95
伸ばした方の足部を内側に倒します。
写真96
 伸ばした方の足部を外側に倒します。

これを10~20回程度繰り返します。坐骨神経痛のある側の脚だけで結構です。

実技34 梨状筋の緊張抑制(臥位)
目的
 坐骨神経痛みがある時に試みます。できれば実技33と両方行います。下向きに寝ることが難しければ無理に行う必要はありません。

写真97
 下向きに寝て右脚の膝を曲げます
写真98
 膝を曲げた側の脚を内側に倒します
写真99
 膝を曲げた側の脚を外側に倒します。

これを10~20回繰り返します。坐骨神経痛のある側だけで結構です。

実技35 梨状筋ストレッチ
目的
 梨状筋の柔軟性を改善します

写真100
 下向きに寝て右脚の膝を曲げます
写真101 101b
 膝を曲げた側の脚を外側に倒します。ここで20~30秒止めます。可能であれば、右足部を手で持ってストレッチのかかりを良くしてあげると良いでしょう。

※実技36・37は椎間板ヘルニアであることがわかっている場合に行います。異なる病態である時は痛みや痺れが悪化する可能性があります。
実技36 持続的腰椎伸展運動
目的
 椎間板の後ろ側に圧を加えることにより、後方に突出した髄核の整復を行う。
 痛みが腰の左右中央にある場合や痺れが両側に同等にある場合に行います。

写真102
お腹を下にして寝る。

写真103
 肘を立てて前腕で体重を支持する。この姿勢で痛みや痺れが増強して耐えられない場合は写真94の姿勢に戻します。

写真104
写真95の姿勢が苦痛でなければ肘を伸ばして手で体重を支えます。この姿勢で痛みや痺れが増強して耐えられない場合は写真95の姿勢に戻します。

写真94、95、96の姿勢のうち耐えることができるところで5~10分姿勢を保ちます。1セット10回を上限に行います。この運動を行っているうちに写真94から写真95へ、写真95から写真96へと進めていけるようであればそのように行ってください。

実技37 持続的腰椎伸展運動(側屈位)
目的
椎間板の後ろ側に圧を加えることにより、後方に突出した髄核の整復を行う。
 痛みや痺れの強さが左右のどちらかに特に強い場合に行う。

写真105 105b
 お腹が下になるように寝る。この時、痛みの強い側が凹になるような姿勢をとる。
写真106
 肘を立てて前腕で体重を支持する。この姿勢で痛みや痺れが増強して耐えられない場合は写真100の姿勢に戻します。

写真107
写真101の姿勢が苦痛でなければ肘を伸ばして手で体重を支えます。この姿勢で痛みや痺れが増強して耐えられない場合は写真101の姿勢に戻します。

写真100、101、102の姿勢のうち耐えることができるところで5~10分姿勢を保ちます。1セット10回を上限に行います。この運動を行っているうちに写真100から写真101へ、写真101から写真102へと進めていけるようであればそのように行ってください。

※この運動では痛みのある側を凹にして寝た姿勢で行いますが、どの程度凹にして行うかは状態によって異なります。実際に行いながらあなたにとって良い位置を探しつつ行ってください。

第5章 
余談:体をまもるための知識


余談1:杖の持ち方

 関節痛の人にとって杖を持つことは良いことです。見た目が気になったり持ち歩くのが不便でないのなら、杖を持つことを考えてみても良いでしょう。
 しかし、ちょっと注意して欲しいのはどちらの側の手に杖を持つのかです。右側の脚が悪い人は左手に、左側の足が悪い人は右手に杖を持ってください。
 よく、右脚が悪いのに右手で杖を持っている人を非常に多く見かけます。大抵皆さん右利きなので右手で杖を持ってしまうようです。しかしこれでは意味がありません。
 そもそも、脚の悪い人が杖を持つことの意味はどこにあるのでしょうか。それは悪い側の脚にかかる体重を、杖を持った手に分散するためです。

写真108を見てください。これが右脚が悪い人にとっての正しい杖のつき方、つまり左手で杖を持った場合の歩行の様子です。右脚を地面についた時に同時に杖が地面についています。普通、右脚が前に出た時には左手が前に出ます。だから右脚が地面についている時には同時に杖も地面につくことになります。右脚にかかる体重の何割かを杖に分散させることができます。

 写真109を見てください。間違った杖のつき方です。右手で杖を持つと歩行中の右脚だけで体重を支える時期に杖が宙に浮いてしまっています。そして痛くない左足を地面についた時に同時に杖も地面につきます。これでは意味がありません。

 ちなみに、杖自体は100円均一で売っている物から一本何万円もするものまでピンキリです。

余談2:サポーターと腰痛ベルト(コルセット)

 膝が痛い人が膝サポーターを着けているのをよく見かけます。サポーターには膝の関節周囲の筋肉の働きを補助する効果があります。サポーターの種類によっては左右両側にバネが入っていて、膝を伸ばすのを強力に助けてくれる物もあります。

 このサポーターには良い部分と悪い部分があります。良い部分は膝にかかる負担を減らしてくれるため、痛みが軽減・消失することがあります。
 悪い部分は膝周囲の筋肉の活動を助けてしまうため、ずっと使っていると膝周囲の筋肉が衰えてしまい関節痛を悪化させます。

 サポーターを着けるべきかどうか。痛みが強い時には着けてください。また、長時間歩いたりするなど、関節へ負担をかけることがあらかじめわかっているような場合には予防のためにサポーターをつけておくと良いでしょう。関節の破壊を防ぐためにも有効です。
 逆に悪いのは、なんとなく習慣としてずっとサポーターをつけてしまうことです。痛くない時や寝る時などはサポーターははずしてください。

 腰痛ベルト(コルセット)も基本的に同じです。こちらの場合、着ける位置に気をつけてください。体の上の方につけてしまっていて腹巻のようになってしまっている人をたまに見かけます。正しい位置は、腰の骨が腰痛ベルトの上下の真ん中にくる場所です。

 サポーターも腰痛ベルト(コルセット)も医師から処方された場合は医師の指示に従って着用してください。医師から「2週間は着けていてください」と言われた場合は痛くなくても勝手に着けるのをやめてはいけません。


余談3:腹式呼吸と胸式呼吸 
腹式呼吸は本当に体に良いのか。いや、そうでもないよ。

 腹式呼吸と胸式呼吸の違いをご存知でしょうか? 有名だから知っている人も多いかもしれませんが改めてご紹介しておきます。
 簡単に言うと腹式呼吸は息を吸った時にお腹が前に出っ張り、息を吐いた時にお腹がへこむような呼吸方法です。
 反対に胸式呼吸では息を吸った時にお腹がへこみ、息を吐いた時にお腹が出っ張ります。

 さて、どちらが体に良いでしょうか。一般的には腹式呼吸が良い呼吸方法だと紹介されているように思われます。それにはちゃんとした理由があります。腹式呼吸を行うほうが深く呼吸をできるのです。これは一回あたりの呼吸で体に取り込むことができる酸素の量が多いということを意味します。つまり効率が良いのです。我々理学療法士も呼吸器疾患のあるような人に対してはこの呼吸方法を指導します。

 しかし、やってみればすぐにわかることですが、運動をしながら腹式呼吸を行うことは不可能です。ランニングをしながら腹式呼吸にチャレンジしてみてください。理屈抜きに無理だということがよくわかります。ウォーキング(歩行)くらいの軽い運動でも結構難しいと思います。

 なぜでしょう。ここで一つ、横隔膜と腹横筋の働きに着目してもう一度腹式呼吸と胸式呼吸について考えてみましょう。図9

横隔膜は膜という名前ですが筋肉です。息を吸う時に主に働く筋肉で、これが働くということは横隔膜は下方に下がるということです。腹横筋はお腹をへこませる時に使う筋肉です。意識的にお腹をへこませることができるのもこの筋肉の作用ですが、普段は無意識に自動的に働く筋肉です。

腹式呼吸では息を吐いた時にお腹がへこみます。腹横筋の作用はお腹をへこませる作用です。つまり息を吐いた時、横隔膜が働いていない時に腹横筋が働くということです。反対に息を吸った時にはお腹が出っ張ります。つまり腹横筋が働いていないため下に下がった横隔膜の作用により内臓が圧迫されてお腹が前に出っ張るのです。

 胸式呼吸では息を吸った時にお腹がへこみます。この時に腹横筋が働いているということです。息を吸っているので横隔膜が働き下に下がっています。腹横筋と横隔膜の両方が同時に働いているため、上向きの力が大きくなり背すじを伸ばす(体幹伸展)方向に脊柱の運動が起こります。反対に息を吐く時には横隔膜も腹横筋も働かないため、体は前に曲がる(体幹屈曲)方向に運動が起こります。

 横隔膜と腹横筋を単純に呼吸のための筋肉であるととらえるなら、呼吸の効率の良い腹式呼吸が圧倒的に有利です。
しかし、横隔膜と腹横筋を良い姿勢を維持するための筋肉、つまり姿勢維持筋であるととらえるならば胸式呼吸の要素を過小評価するわけにはいきません。背中側の筋肉を過剰に働かせることなく良い姿勢を保つにはこれは重要な要素なのです。

胸式呼吸では息を深く吐くと背骨が前に曲がる(体幹屈曲)方向に作用が起こってしまうため深く息を吐くことが難しく、呼吸は浅くなりがちです。深く息を吐くことができないため呼吸の効率のみで考えると効率が悪いのは確かです。

 本書の中で何度か説明しているように背中側の筋肉を過剰に働かせる姿勢をとると関節痛の原因になります。その意味では胸式呼吸の要素、つまり横隔膜と腹横筋の作用で体を支えるということは関節痛の治療において重要な意味を持ちます。

結論
 腹式呼吸も胸式呼吸も同じくらい重要

 いずれの呼吸方法にしても横隔膜と腹横筋を協調させて働かせることが重要です。その練習のために第2章では胸式呼吸の要素の強い運動方法(息を吸いながら背すじを伸ばすような運動)を、第4章では腹式呼吸の練習方法を紹介しました。

 本当に勉強するほどに神様は人間の体を無駄のないように作っていると考えさせられます。


余談4:肩こり・首のこり

 不良姿勢はどれも例外なく背中側の筋肉に強い負担がかかります。第2章などでも述べたように、不良姿勢はどれもお腹側の筋肉である腹横筋の働きが悪いため、反対側の背中の筋肉に負担を強いるのです。これは腰に限らず上は頭頚部から背中を通って腰の下まで、すべての背中側の筋肉に負担をかけます。
 だから首のこりにつながるのは当然ですし、首の筋肉には横に広がり肩に付くものがいくつかあるため(肩甲挙筋や僧帽筋上部線維など)肩こりを引き起こすのです。

 だから、もし肩や首が慢性的にこっている場合は不良姿勢の影響である可能性が高いのです。本書では詳しく触れませんが、不良姿勢では頭部や肩の位置も正常と異なる場所に変位してしまっているため、周辺の筋肉に強いこりを引き起こすばかりか、関節痛などの状態を作り出します。
 具体的に言うと、肩や首のこりが強い人は頚椎症や頚部の椎間板ヘルニア、五十肩や胸郭出口症候群などの疾患が起こりやすいのです。あと不良姿勢なので当然ですが本書に書いてある腰痛・膝関節痛も起こりやすいといえます。ちなみに、五十肩などは左側に多い傾向にあります。腰から下はよく使う右側を、肩や首は使われない左側を悪くしやすいようです。あくまで傾向ですが、これは偶然ではありません。あまり意識している人は少ないようですが、肩こりの人は右の凝りと左の凝りの強さについて一度意識してみると良いかもしれません。

 心当たりのある人は本書の第2章で紹介した方法などを実践して姿勢や動作の不良を改善して予防に努めるのが賢明かと思われます。


余談5:インナーマッスル(深層筋)とアウターマッスル(浅層筋)

 インナーマッスルという言葉を聞いたことはありませんか? 最近その重要性が解明されてきており、よくその名前を聞くようになりました。
 インナーマッスルとは体の内側・深い奥のほうにある筋肉です。例えば腹筋群と呼ばれる筋肉には、浅いところ・体の表面に近いところから順に腹直筋→外腹斜筋→内腹斜筋→腹横筋という4種類の筋肉が存在します。

 体の表面に近い筋肉は主に運動をする時に使う筋肉です。例えば腹直筋は体を前に曲げる運動、外腹斜筋や内腹斜筋は体を前に曲げながら体を捻る方向に作用します。
それに対して体の表面から遠い筋肉・奥にある筋肉は姿勢の制御や関節の安定化に作用する筋肉です。例えば腹筋群の中で最も深い位置にある腹横筋はお腹をへこませて内臓を圧迫し、背中側の筋肉に頼りすぎずに体を支える作用があります。

 いわゆる腹筋運動を行うと腹直筋を鍛えるだけで腹横筋はあまり働きません。これでは腰痛などの治療には効果が期待できません。
これと同じように、太ももの筋肉を鍛えるためにイスに座り足に重りをつけて膝の曲げ伸ばしをする運動を行っても、太ももの表面にある大腿直筋という筋肉が働きすぎて膝関節痛の治療に重要な中間広筋などを十分に働かせることができません。
 
強い負荷をかけて運動を行うと体の表面に近い浅層の筋肉:アウターマッスルの働きが優位になってきます。運動には重要な筋肉なのですが、この筋肉の緊張が痛みの原因となることがよくあるため注意が必要です。

 よく関節痛の原因は筋力の低下からきているから治すためには筋トレをしないといけないと思われがちです。
確かにインナーマッスルの活動が低下していることを、「筋力低下」と言うのは言葉的には間違いではないのかもしれません。
しかし治療のために筋トレを行うことは間違いである場合が多いばかりか、痛みを増悪させる結果にもなりかねないので注意してください。

まとめ
 痛みの自己治療では筋トレはしないほうが良い


 ※状態によっては強い負荷での筋力増強運動が必要な場合もあります。病院で専門の医師や理学療法士などに高負荷での運動を指導された場合はそれに従ってください。


余談6:マッサージで痛みは治るのか

 腰痛などで悩まれている人でマッサージに通っている人も多いかと思われます。そもそもマッサージで痛みは治るのでしょうか。

第1章でも述べましたが、痛みの原因と治療方法についてもう一度おさらいしてみましょう。

痛みの原因
 1:痛みの原因は筋肉の不活動と筋肉の活動のしすぎ(筋緊張の亢進)
 2:その原因は姿勢と動作の不良
 3:筋肉の活動の異常が関節内の組織の配置のバランスを崩す=痛みが出る
 4:筋緊張の亢進はそれ自体が痛みの原因にもなる

 治療方法
 1:姿勢と動作の改善
2:活動しすぎの筋肉の働きを抑制する(筋緊張の抑制)、
3:不活動の筋肉を活動させる(筋活動の促通) ただし筋力増強ではない
4:関節内の組織の配置を正常化させる

 指圧やマッサージによって筋肉を押したり揉んだりすると筋肉の線維が伸張されて筋肉の緊張が緩みます。これはストレッチによる筋緊張の抑制と同じ作用機序です。筋肉内にある受容器が筋線維の張力を感知して反射的に筋肉の緊張をやわらげるのです。筋肉の緊張が緩むため痛みの原因の4に挙げた「筋緊張の亢進はそれ自体が痛みの原因にもなる」という点を改善します。

 しかし、それ以外の原因を改善していないためすぐにまた元に戻ってしまうのです。実際に経験した人ならわかると思いますが、マッサージを受けた後は筋肉の凝りがほぐれて体が軽くなったような気がするのに、翌日にはまた同じ状態に戻ってしまいます。
 筋肉の緊張に対して何もしないよりはたまに指圧やマッサージで筋緊張をほぐした方が良いと思います。しかし、痛みの根本的な治療にはなり得ないということはよく覚えておいてください。

 注意して欲しいのは、指圧やマッサージはストレッチと違い緊張した筋肉の限定された一点に圧をかけて筋肉の線維を伸張する方法なので、気持ちが良いかわりに筋肉の線維を傷つけやすいという点です。筋肉の線維が傷つくと余計に筋肉が緊張します。いわゆる揉み返しです。マッサージのやりすぎには注意してください。

改めて申しておきますが、痛みの治療で最も重要なのは姿勢の改善です。


余談7:やめて欲しい腰痛体操

 腰痛の治療や予防の体操というものは昔からあります。その中でも最もポピュラーな運動が図10のような、両脚を曲げて膝を抱えるような運動です。これは腰部の背中側の筋肉をストレッチするための方法です。
しかし、私としてはこれは最もお勧めできない運動方法です。私はこれでヘルニアになりました。

 学校を卒業して理学療法士として臨床現場に出てすぐ、まだ入職から2ヶ月くらいの時のこと、私は軽い腰痛になっていました。腰痛と言っても「凝る」とか「張る」といった程度のもので、痛いかと聞かれると痛いような痛くもないような微妙な程度のものでした。
 
 そこで背中側の筋肉をストレッチするために図10のような運動を自分でしていたのですが、運動中に突然激痛が走りました。しばらくしても治らず、運動時(特に前屈時)に強い痛みが出たため整形外科を受診したところ、椎間板ヘルニアと診断されました。

 理由は第4章で紹介したことと重複するのですが、背中側の筋肉が過剰に緊張した状態で前屈を行うと、ある一箇所に集中的に負荷がかかってしまいます。図6 私もその場所を損傷してしまったわけです。
私の場合は椎間板がやられてヘルニアになりましたが、場合によっては他の組織が損傷する可能性も十分にあります。そうなると、例えば変形性脊椎症などといった診断名をつけられるでしょう。

 えらいもので自分が患者になると必死で治療方法を探して勉強します。理学療法士となって間もない時のことでしたが、それでもプロなので専門書など文献を必死に調べて自己治療をしました。職場の先輩に治療してもらいながら教えを受けたりもしました。それでなんとか1ヶ月か2ヶ月くらいで状態は元にもどりました。ちなみに本書で紹介している治療法のいくつかはその時に調べたものです。


余談8:不良姿勢の最終形態

 ここまでに幾度か、不良姿勢が痛みの原因であるということを紹介して参りました。では不良姿勢を放置しておくと最終的にはどうなるのでしょうか。

答えは背骨がつぶれます。

 おどしで言っているのではありません。専門的には脊椎の圧迫骨折という名前の骨折で、高齢者に多い4大骨折の一つです。よくある骨折なのです。

 突然この骨折がおこる場合、強い痛みが出ます。骨折なので当然です。治療のためには手術や長期間の固定が必要となります。

 徐々に圧迫骨折が進行するということも多くあります。長年かけて徐々に圧迫骨折が進行する場合、痛みは感じないか、慢性的な腰痛が続くかのどちらかです。
圧迫骨折では普通、背骨の椎骨の前側がつぶれます。その結果、徐々に圧迫骨折が進行するということは、徐々に体が前に曲がり前のめりになるということです。

不良姿勢は腹横筋の活動不足によるものであると、本書では幾度も説明してきました。腹横筋の働きによる背骨の前側からの支えがないために、最終的に前のめりになってゆくのです。その結果、背骨(椎骨)の前側がつぶれると言うこともできます。

街で背中の丸まったお婆さんを見ることはよくあると思います。その様なお婆さんは、この「徐々に圧迫骨折が進行」した人なのです。

この様な人は不良姿勢の最終形なので当然いろいろ痛みを訴えられます。

あとがき

 すみません。あとがきですがちょっと長くなります。

 本書は実技を紹介するための本ですが、タイトルを「読むだけで治る本」と名付けました。ここまでお読み頂ければ痛みの根本的な原因が不良姿勢にあるということがご理解いただけたかと思います。例え本書で紹介した実技を一つも行わなくても、自分で姿勢を意識するだけでも痛みが治る可能性があります。少なくとも関節破壊の進行を阻止するためには有効です。意識をすれば姿勢は変わります。姿勢が変われば人生が変わります。

 はじめにも申しましたが、医療保険制度の問題で慢性期疾患のリハビリを病院で行うことはかなり難しい状況です。
本当は病院で理学療法士に個別のリハビリを受けることが最も望ましいのですが、それが困難である以上、自分で治すより他に仕方がありません。

本書は私が理学療法士として、病院でリハビリとして行っている治療方法をアレンジして自分一人でも行うことができるようにしたものです。

病院での1回の治療時間は20分から40分程度です。だから本書の治療内容を実践した場合にはそれくらいの時間がかかると思います。人によってはもっと時間がかかるかもしれません。

 たまに、「数分でOK」というような見出しで書かれている本などを見かけますが、本当にそれで痛みが治るのでしょうか。私の知る限り、極めて限られた状態以外でそのようなことは不可能です。
はっきり言ってしまうと、そんなに簡単に慢性痛は治りません。だから、時間をかけて丁寧に治療しなければならないのです。

私見ですが、
 一回20分~40分
 等間隔で週に3回以上
 最低でも1ヶ月
最低でもこれくらいの時間、治療を行わないとなかなか成果は上がらないと思います。

 本書の内容には私の私見や経験則から書かれた内容も含まれております。学術書ではないため学術論文などに依った科学的根拠がなくても私が有益であると考える内容を記載しました。また、痛みの原因等について、自己治療の困難なものや有病率の少ない疾患についてはその説明がなされておりません。「痛み」については本書で取り上げた内容以外にも多くの要因があり、しかも現代医療では未解明なものも多いのです。その点、ご了承ください。

 余談ですが、この本を書いていて気づいたことがあります。本書で紹介している実技の内容と一般にダイエットとか美容のための体操として紹介されているものとの共通点がかなり多いということです。考え方で言うと「姿勢を良くする」「腹横筋でお腹を締める」「筋肉をやわらかくする」というのがその主なものです。
 考えてみれば、「姿勢が悪い」とか「お腹が出っ張っている」などというのは痛みを引き起こしやすいだけでなく見た目にも醜いですし、当然のことかもしれません。人の脳は本能的に健康的な人を「美しい」と感じるように出来ているのかもしれません。


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